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アメリカ人監督の目から見た日米安保とは?深作欣二監督に影響を受けた『ANPO』女性監督

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リンダ・ホーグランド監督
リンダ・ホーグランド監督

 1960年の安保闘争といわれた激動の時代を、その時代を生きたアーティストたちがどのように表現したのかという観点から描き出した映画『ANPO』のメガホンをとったリンダ・ホーグランド監督に映画の裏話を聞いた。

映画『ANPO』場面写真

 ステレオタイプな見方かもしれないが、アメリカ人監督から見た日本を描いた映画、と聞くと、日本人としてどこか押し付けがましさを感じることがある。だが、ホーグランド監督は流暢(りゅうちょう)な日本語で「『ザ・コーヴ』みたいなね。あれ許せないよね」と笑っていた。期せずして映画『ザ・コーヴ』の名前が出たが、そのプロパガンダ映画とは逆に、この『ANPO』という映画は、人々の話に耳を傾けている印象がある。それは長年、通訳や翻訳の仕事をしてきて、常に相手が何を言いたいのかを考えてきたホーグランド監督ならではのスタイルなのだろう。

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 さて、この映画の中には、映画『仁義なき戦い』(深作欣二監督)『火垂るの墓』(高畑勲監督)『しとやかな獣』(川島雄三監督)『日本の夜と霧』(大島渚監督)といった映画の断片が登場する。アメリカと戦争をした、かの戦争が日本人にどのような影響を与えてきたのか、戦争を経験してきた監督たちだからこそ描ける怒り、叫びがそこから伝わってくる。この絶妙なチョイスは数々の日本映画の字幕を担当してきたというホーグランド監督ならではなのだろうか。「確かに、『仁義なき戦い』はわたしが英訳をしたから知っていましたけど、ほかはわたしの趣味ですね」と話すホーグランド監督は、相当な日本映画通であることがうかがえた。

 ホーグランド監督は、これらの日本映画に魅せられた理由について、「おそらく今では政治的と言われるような題材を、エンターテインメントとしてさらっと表現してるところですよ。例えば『しとやかな獣』の脚本を書いたのは、新藤兼人さんなんですが、彼ぐらいじゃないと、あのむちゃくちゃなブラックユーモアは書く勇気がないでしょうね。だからついていくのに必死ですよ、彼らは達人だから」と話す。そして「日本が戦争責任を正式にとらなかったと、いつもバッシングを受けてきましたけど、少なくとも、あの戦争を直視しようとしている日本の映画監督たちはたくさんいた」と付け加え、『ANPO』が深作欣二監督の1972年公開の映画『軍旗はためく下に』の構成に影響を受けたという事実を明かしてくれた。

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 それにしても日本というのは矛盾に満ちた国だ。平和な国のはずなのに、軍人がたくさんいる。米軍基地は要らないと言いながら、それでもアメリカに頼らざるを得ない。この『ANPO』という映画を観ていると、そういった現状に思いをはせずにはいられない。宣教師の娘として日本で生まれ育ったホーグランド監督の立場もまた矛盾している。「わたしには日本の投票権もないし、パスポートもないから、自分の国ではない。でも自分の故郷だと思っている。日本の田舎で育ったことで、日本人独特の、気の使い方や思いやりにものすごく影響されて育った。そういう日本に対する感謝の気持ちがあるんです」と話す。しかし幼いとき、広島・長崎の原爆の事実を知り、ある種、自分の故郷に対する加害者であるという立場を自覚したのだという。「だからわたしが責任をとって批判をしなくちゃいけない国はアメリカなのね。日本の批判は投票権のある方がしてください。確かに日米の関係と軍隊の問題は複雑だけど、だからって何も考えないというのは、大人の発想じゃないですから」と話す笑顔が印象的だった。

映画『ANPO』は9月18日より渋谷アップリンク、横浜シネマジャック&ベティほかにて全国順次公開

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