寺島しのぶ、賞を受賞し「実はつらかった…」と悩んでいた日々を告白!
28日、大分県の由布市湯布院公民館で開催されている第35回湯布院映画祭で、映画『キャタピラー』が上映され、主演の寺島しのぶ、若松孝二監督が登場した。
やはり寺島のベルリン映画祭銀熊賞効果は絶大だったようだ。本映画祭の中でも本作の注目度は特に高く、九州ミニシアターの雄、地元大分のミニシアター「シネマ5」で本作が上映中であるにも関わらず、湯布院映画祭では異例となる追加上映を敢行。寺島と若松監督の登場に、シンポジウム会場は立ち見も出るという大盛況となっていた。その状況を見た若松監督は「寺島さんが銀熊賞をとってくれて良かった。もし銀熊賞をもらわなかったら、映画『靖国 YASUKUNI』みたいにわざと右翼を刺激して騒いでもらおうと思っていたからね」と若松節全開で上機嫌だった。
もちろん寺島にとって、ベルリン国際映画祭で賞をとったことは大きなことだが、今はプレッシャーはあまり感じていないとのこと。むしろ2003年に出演した『赤目四十八瀧心中未遂』と『ヴァイブレーター』で多くの賞を総なめにした後の方がつらかったと述懐していた。「次は何をやるべきか悩みました。賞をいただいた後、モチベーションを保つのがつらかったですね。やりたいものがない状態でしたから。『キャタピラー』という宝物が出会うまでにかれこれ10年くらいたちました。またいい作品にめぐり合うのは10年後くらいですかね(笑)」と冗談を交じえながらも、かつて女優として評価されることがプレッシャーだったことを明かしていた。
寺島といえば、父が歌舞伎俳優の尾上菊五郎、母が女優の藤純子であるが、「彼らの反応はどうだったのか」という質問に「父はまだ観ていないんですが、母はわたしに黙って試写で観たらしくて。またわたしが裸になっているから、監督が第一声、すみませんと謝ったそうです(笑)」と会場を笑わせていた。しかし藤は怒るどころか、「社会派の映画に出られて幸せね。監督が台本を送ってくれなかったらベルリンもなかったわけだから、監督に頭があがらないわよ」といたく感動したとのこと。
そして藤が前売り券を650枚、追加で100枚買ってくれたことを若松監督が誇らしげに発表すると、会場からは盛大な拍手が沸き起こった。寺島は当初はその話に納得がいっていなかったようだが、若松監督からちゃんと映画を観て、娘がいい芝居をしていると思ったから買ってくれたんだと寺島を諭し「ありがとうってメールでも打ったら?」とアドバイスしたと明かした。
その後は結局、「(寺島は)きちんとメールをしていたみたい」と若松監督が母娘のほのぼの話を披露し観客の心をほっこりと温めていた。(取材・文:壬生智裕)
第35回湯布院映画祭は29日(日)まで由布市湯布院公民館で開催中