「金返せ!」ぶっちぎりの最低点!ヴィンセント・ギャロのオレさまぶりに観客や報道陣から失笑の嵐!
第67回ヴェネチア国際映画祭
米俳優ヴィンセント・ギャロが第67回ヴェネチア国際映画祭でオレさまぶりを発揮して、海外プレスはもちろん、観客からも失笑を買っている。ギャロは今回、コンペティション部門に監督作映画『プロミシズ・リトゥン・イン・ウォーター』(原題)と、ポーランドのイエジー・スコリモフスキ監督の主演作映画『エッセンシャル・キリング』(原題)、そしてオリゾンティ部門にも短編監督作『エージェト』の3作品が選ばれており、今年はギャロ祭状態なのだが、上映チェックのためにヴェネチア入りしているものの、会見は「憂鬱(ゆううつ)になる」とキャンセル。ほか、公式上映でレッドカーペットを歩くのも嫌がり、公の場に出ることを頑なに拒んでいる。何かと問題発言の多いギャロのワガママに、映画祭側も触らぬ神に祟りなしと判断したのか、静観しているようだ。
オレさまぶりは、映画祭初日に販売された公式カタログからして予想できた。ギャロの監督作映画『プロミス・リトゥン・イン・ウォーター』のページにはスチール写真の掲載もなし。あらすじ欄には「この映画は、ヴィンセント・ギャロ監督・プロデュースによるもの。他の情報はなし」。監督コメントも「ノー・コメント」と、一切の作品の事前情報を掲載しなかった。『エージェント』のページも同様だ。その秘密主義が功を奏してか、6日に行われた『プロミシズ・リトゥン・イン・ウォーター』のプレス試写は1,700席が満席になった。だが映画が始まるや、論議を呼び起こした映画『ブラウン・バニー』のカンヌ国際映画祭初お披露目時と同じような悪夢が再現された。
オープニングの音楽、美術、編集、監督、そしてもちろん主演もオレ! すべてがヴィンセント・ギャロという自己主張しまくりのクレジット表記に、まず笑いが。物語は、葬儀会社に勤めるナルシスティックな男の恋物語で、わずか75分の作品なのになかなか話が進展しないことから途中で席を立つ人が多数。そして映画が終わるや大声で「中身がスカスカだな」と発したイタリアプレスの声が響き渡った。
そのプレスの反応を証明するように、映画祭で毎日発行されている「ヴァラエティ イタリアン・デイリー版」の星取評では、17本上映されたコンペ作のうち、ぶっちぎりの最低点3.5点(10点満点)。ちなみに『ノルウェイの森』は5.7点だ。また、同映画祭名物の、観客が作品の罵詈雑言をぶちまける掲示板「金返せ!」コーナーでは、タイトルの「水に書かれた約束」を文字って、「トイレに書かれた約束」と皮肉る人もいた。
ギャロにとってこの反応は想定内だったのか? 会見拒否は懸命な判断だったのかもしれない。しかし『プロミシズ・リトゥン・イン・ウォーター』で日本人カメラマンMasanobu Takayanagiが手掛けたモノクロ映像は美しく、アフガニスタンの逃亡兵を演じた出演作『エッセンシャル・キリング』は前述した「ヴァラエティ」誌の評でも6.7点と好評なだけに、自分で自分の作品の評判を落とすような行動の数々は何とも残念だ。(取材・文:中山治美)