アカデミー前哨戦はトロントから始まる!今年の本命はこのズバリこの作品!【トロント映画祭】
毎年トロント映画祭は、オスカーの前哨戦が始まる場所と言われているが、すでにうわさされているナタリー・ポートマン、『ブラック・スワン / BLACK SWAN』(原題)と、ニコール・キッドマン『ラビット・ホール / Rabbit Hole』(原題)でのオスカーノミネーションへの評判に続き、男優部門、作品賞におけるオスカー候補のうわさも上がっている。
まずは、『キングス・スピーチ / KING'S SPEECH』(原題)。トム・フォード初監督作の『シングルマン』に主演し、アカデミー賞にノミネートされたばかりのコリン・ファースが再び名演。彼が演じるのは、現イギリス女王、エリザベス2世のの父親である、ジョージ6世。彼は子どものころから、言語障害があり、重度の吃音症に悩まされていた。この物語の素晴らしいところは、時代ものでありながらも、その彼が、ヘレナ・ボナム・カーター演じる妻エリザベスの助けを借りながら、専門医師を雇い、いかに吃音を克服するために努力し、感動的な演説をするというところに物語の焦点が絞られたおかげで誰もが共感できるテーマとなっている。現時点では、作品賞、主演賞、助演賞、脚本賞など、作品全体でアカデミー賞のノミネートされる可能性があると言われている。
さらに、最も人気があった作品は、『スラムドッグ$ミリオネア』のダニー・ボイル監督最新作『127 HOURS』(原題)だ。
これは、ジェームス・フランコ演じる、ありきたりの登山好きの青年が、ある日登山中に腕を岩に挟まれてしまうというもの。そこからいかに脱出するのかを描く、実話に基づいた物語なのだが、この岩に挟まれたまま127時間過ごすという、ほとんどジェームス・フランコが動けないままのひとり芝居を映画で見せていかなくてはいけない物語の中で、過去を思い出す回想シーンを入れたりしながら、今を精いっぱい生きろというメッセージを、まるで説教臭くなることなく、ボイル特有のスタイリッシュな映像を多用し、それでいて思い切り感動的な作品として仕上げているのだ。この作品こそ、作品賞、監督賞、主演男優賞の現時点での筆頭といっていい。
現時点での強敵は、ニューヨーク映画祭でこれからプレミア上映される、デヴィッド・フィンチャー監督の『ソーシャル・ネットワーク/ SOCIAL NETWORK』(原題)。それと、マーク・ウォールバーグ主演、デヴィッド・O・ラッセル監督のボクシング映画『ザ・ファイター / THE FIGHTER』(原題)だ。
これから発表されるトロント映画祭の観客賞にも注目。過去に選ばれた『スラムドッグ$ミリオネア』や、『プレシャス』は、いずれもアカデミー賞の切符を手に入れたばかりか、オスカーを受賞している。(取材・文:中村明美)