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日本の自然分娩に欧州では賛否!『玄牝 -げんぴん-』河瀬直美監督に独占インタビュー!

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河瀬直美監督-第58回サンセバスチャン国際映画祭にて
河瀬直美監督-第58回サンセバスチャン国際映画祭にて - Photo:Harumi Nakayama

 スペインで開催中の第58回サンセバスチャン国際映画祭コンペティション部門にドキュメンタリー『玄牝 -げんぴん-』で参加中の河瀬直美監督が、現地でインタビューに応じた。

映画『玄牝 -げんぴん-』場面写真

 同作品は自然分娩を推奨する愛知県岡崎市の吉村医院の院長・吉村正氏や助産婦、そこに通う妊婦らを追ったドキュメンタリーだが、欧州では宗教的・人権的な理論から病院での無痛分娩が基本とあって、賛否を呼んでいる。 本作品は長年、生と死をテーマに作品作りをしている河瀬監督が、吉村先生に興味を抱き、会いに行ったことから企画がスタートした。ちょうどそのころ、毎年3月に香港国際映画祭に併設されている企画マーケット「HAF」への参加を打診され、2009年3月に本企画を提案。そこでパリス・プロジェクト賞を受賞し、2009年7月にフランスで行われた映画祭「パリスシネマ」の企画マーケット参加の権利を得た。そこでは出資者を募るべく数十社の会社とミーティングを持ったのだが、全員に同様の質問を受けたという。

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 「欧州ではお産に対する考え方が違うんです。『お産の痛みは、神が与えた罰である。その痛みを助けられるのが、医者である』と。だからここスペインでも無痛分娩が基本だそうですけど、それに対してこの企画は、社会に対して意見を言っていくことになる。それはなぜなのか? フェミニズムに対する挑戦なのか? とか、いろいろ言われました。それに対して私は、この映画は自然分娩を推薦しているだけの映画じゃない。女性の一つの選択肢としてこういうものもあるんだと言うことを提示したいと説明しました。結果、今回は海外からの共同製作を得られず、自身の会社(組画)だけで製作することになったんです。

 (カンヌ国際映画祭で新人賞を受賞した)『萌の朱雀』以降、ずっと海外の映画会社の資本を得て作って来ましたからね。原点回帰? ある意味、そうですね」 予想通り、地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」の星取表では、10点満点で平均5.5点と、コンペティション作品15本中8位という評価だ。公式上映やプレス試写でも、3人の妊婦の出産シーンに耐えられないのか、途中退席する人も見られた。

 しかしその一方、記者会見では女性記者から「この映画は良い教材になると思う」といった声や、上映後に河瀬監督のもとに駆け寄り「生死について考えさせられました」と意見を寄せた女性もいた。 今後同作品はフランス・ポーで開催される映画祭のほか、欧州・南米の映画祭にも出品参加予定だ。「インタビューを受けていて、文化や社会的な違いも超えてわかってくれる人は、わかってもらえたと思っています。日本でも、お産は怖いもので、妊婦は絶対安静という認識があるけど、吉村先生の考えは、お産が普通のことのように行われていた昔のように、妊娠中も体を動かして筋肉を付けて、健康な心身で産みましょうと。でも今は、妊婦はヘンに守られ過ぎているところがあると思うんですね。加えて、現代病と言われるストレスなどで女性が妊娠しづらい体になっている一方で、男性も妊娠させる力がなくなっていると言われている。これって、人類にとってどうなんだ? と。それこそ、子どもの数がどんどん減ったら種の保存がままならなくなるワケでしょう。これを契機に、もう少し先の議論が展開されればうれしいですね」

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 また河瀬監督と言えば今年8月、自身が顧問を務め「第1回なら国際映画祭」を開催したばかり。主催する側の立場を経験し、映画祭を開催する意義を考えたようだ。「サンセバスチャンは58回と歴史が古く、なら国際映画祭はまだ赤子同然。そのサンセバスチャンの第1回大会のときはどうだったんだろう? と想像しましたね。美しい湾のある観光地で、歴史的な建造物も多いこの街に文化が根付いていく感じは、奈良と似ているような感じがするんです。この街に世界からお客さんが毎年来て、こうして続けていけば、いずれ、なら国際映画祭もこんな風になるのかなぁって(笑)。夢が広がりました」すでになら国際映画祭は来年の第2回大会に向けて、新鋭監督を奈良に招き、奈良を舞台に映画製作をするプロジェクト「NARAtive(ナラティブ)」が始動している。(取材・文:中山治美)

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