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ストーリーが難解すぎる!拍手もまばら…カンヌ国際映画祭のパルムドール受賞作品はニューヨーカーに不評?

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アピチャッポン・ウィーラセタクン監督
アピチャッポン・ウィーラセタクン監督

 今年のカンヌ国際映画祭で見事にパルムドールを受賞したタイの作品『ブンミおじさん(仮題)』(英題はUncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives)が、ニューヨーク映画祭(N.Y.F.F 48th)に出展され、アピチャッポン・ウィーラセタクン監督が記者会見に登壇した。

 同作は、タイの北部にある田舎町で暮らしている腎不全を患っているブンミおじさんのもとに、ある日死んだはずの妻がゴーストとして現れ、さらにしばらく家を留守にしていた写真好きの息子が猿人になって戻ってくるという個性的なストーリー。輪廻の世界で生きる動物と人間の生を自然を通して描いていて、映像作家の特徴が出た作品に仕上がっている。

 まず、撮影されたこのタイ北部の地域については「僕もこの地域で育ったのですが、かなり厳しい自然環境であるため、多くの若者がバンコクやプーケットに移ってしまっていて、比較的貧しい町なんです」とのことだが、この自然環境が、この映画の1つのキャラクターになっている。

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 映画内で主人公のブンミおじさんが、過去に共産主義者をたくさん殺したと語っているが、その歴史的背景については「この地域は貧しかったために、80年代には、共産主義のイデオロギーに感化された人たちがかなりいたんです。もちろん、自分が共産主義であることを認めれば、その場で撃ち殺されたり、認めなくても体中を痛めつけられたりしたために、かなりの若者が家族を残してジャングルに逃げていた時期があったんですよ」と語るアピチャッポン監督は、その歴史的な背景を、この映画の息子のキャラクターである猿人となって戻ってきた役と関連させているようだ。

 アピチャッポン監督は、過去の作品にもこの主人公のブンミおじさんというキャラクターを登場させているが、「このブンミおじさんのキャラクターは、今作で終わりにしたいと思っています(笑)。俳優Jenjira PongpasとSakda Kaewbuadeeは、僕の作品の常連なんですが、この映画のほとんどは俳優経験のない人ばかりで、ブンミおじさんを演じたThanapat Saisaumarも、もともとは建設業に携わっていた人なんです。そういう人たちをキャスティングした理由には、彼らが他の映画での先入観を持たずに参加してくれるからなんです」と語った。

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 この作品が数多くの海外のプロデューサーを通して製作されていることについて「それぞれ国の違うプロデューサーでも、作品の内容は変わらないんです。参加してくれているプロデューサーは、僕の製作に情熱を持ってくれているので、彼らに守られている感じがしています」とプロデューサーたちのサポートに感謝した。これまでの彼の作品のほとんどは、商業的な映画作品とは言えないため、プロデューサーを確保するのにも苦労していそうだが、彼の作品の熱狂的な支持者は多いため、定期的には映画製作ができているようだ。

 最後にこの映画の上映後、普段拍手喝采となる会場が、わりとまばらな拍手しか起こっていなかった。世界中の映画を見慣れているニューヨークの批評家からでさえ、これがパルムドールを受賞した作品?という声があちこちで聞こえたくらいだった。ちなみに、2004年に彼がカンヌ国際映画祭に出展した映画『トロピカル・マラディ』でも賛否両論が巻き起こっていたらしい。彼の作品は、日本ではこれまで東京フィルメックスなどの映画祭に出展されてきたが、おそらく正式な日本公開は今作が初めてになる。

 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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