『告白』中島哲也監督、「オリジナル作品を作る予定はない」と断言!原作を中島色に染め上げる秘訣
衝撃的な内容で賛否両論の嵐を巻き起こした映画『告白』が早くも1月28日にDVD、ブルーレイとなって発売される。その発売にあたって、さまざまな作品を映画化し、その手法で観客の心をつかんできた中島哲也監督が、原作との出会いから映画化までのプロセスを語った。
『告白』の原作は、2009年本屋大賞を受賞した湊かなえの同名小説。中島監督がその原作を本屋で偶然手に取ったことから、映画化への道が始まったというエピソードはすでに広く知られている。その出会いについて、中島監督は「本屋には毎日行っているんですよ。なかなか買うまでには至らないんですが、『告白』の場合はその場で第1章を読んで、ハードカバーで買いました。だって、このタイトル。どれだけ自信があるんだ! と思うでしょ」と振り返った。そして、読むジャンルにはこだわりがないときっぱり。嶽本野ばらのロリータ小説を原作とした『下妻物語』から、シリアスな要素を含む『告白』まで、幅広い作品を手掛けてきたそのアイデアの源を明らかにした。
今回発売される『告白』完全版のDVD、ブルーレイには特典として、撮影風景や編集作業の様子の一部が収録されているが、その映像からは、中島監督ならではの手法も伝わってくる。中でも、以前、中島監督作品を一挙に上映した「中島哲也映画祭」で、『嫌われ松子の一生』に主演した中谷美紀が、「『告白』を観ると、中島監督がどれだけ人の心の奥深くを真摯(しんし)に見つめているかがひしひしと伝わってくる」と話していた通り、中島監督の徹底した演出による人物の描き方は圧巻だ。しかし、中島監督は「広く人間を知ろうとは思ってないです。マンウォッチングとかどうでもいい」と意外な発言。「30年一緒にいますけど、僕にとっては奥さんだっていまだに謎。そうやって1人の人と徹底的に深く付き合うことが大事なんだと思います。目の前にいる人をなぜだろうと見続けて、それでも結論なんか出ないんだと思います」と語った。
一方で、『告白』を制作した理由について、「映画化したいと思うのは、松子さんに会いたいとか、桃子ちゃんの生き方が面白いとか、森口先生の心の奥底を知りたいと思う、そういう人間的興味ですよね」とも語った中島監督。「30年一緒にいても謎」という人間への興味が、中島作品の根源にあることもうかがわせた。
そうして制作された『告白』は、第83回米国アカデミー賞の外国語映画賞に日本代表として選出された。しかし、中島監督は「僕が意気込んでもねえ」とそっけない。賞をもらうことが映画制作に対するご褒美だと公言する俳優や監督もいる中、「僕にとってのご褒美は、それはやっぱりお客さんに観てもらうこと」と観客のための映画づくりを宣言した。
そんな中島監督は、原作のないものを一から脚本し、オリジナルの作品を作ることについては、「何か面白いアイデアが浮かんだらやってみたいですよ。でも、ただでさえ1本作るのがゆっくりですからね。原作があっても、映画として完成させるには2年ぐらいの期間がかかる。オリジナルとなると10年はかかるでしょう。すると、その間、どうやって生活していけばいいんだと。さもしい考えですけど、僕も2年に1本ぐらいは作っていきたいですから、そうなると原作を映画化するのが一番かなと思います」とこれからも自身の興味をそそる原作を探していく姿勢。それも観客に数多くの作品を届けたいという中島監督の思いから来ているのかもしれない。
インタビューでは、「お客さんが一番」と語りながら、「そういえば、劇場に自分の映画を観に行ったことはないですね。お客さんと一緒に観るなんて、とてもじゃないけど無理です」と話し、観客の反応はアンケートや信頼できるスタッフに教えてもらっているというシャイな一面も垣間見せた中島監督。次回作でも、そのジャンルにこだわらない観察眼と、人物を見事に描写するその手法で、我々の予想を裏切る中島色の作品を届けてくれることだろう。
映画『告白』はDVD完全版(税込み:4,935円)、ブルーレイ完全版(税込み:5,985 円)、DVD特別価格版(税込み:2,940円)は東宝より1月28日発売、DVDレンタルは1月14日開始