売れっ子監督園子温が電気止められ「3日くらい暗いまま」
12日、池袋の新文芸坐10周年記念企画「00年代 もう一度スクリーンで観たい映画はこれだ!」内で、映画『愛のむきだし』が上映され、新作映画『冷たい熱帯魚』の公開を控える園子温監督がトークショーを行った。
豊富で魅力的なプログラムで、映画ファンの心をガッチリつかむ東京・池袋の名画座、新文芸坐が10周年を迎えたことを記念して、「映画館で観たい映画」のリクエストを実施。その中から選ばれた11本の作品を上映するのが本企画である。そしてこの日は、237分という上映時間が話題になった園監督の『愛のむきだし』が上映されることを記念して、雑誌「映画秘宝」の田野辺尚人編集長をMCに迎えたトークショーを実施。会場は立ち見が出る超満員で、「こんなにたくさんの方が来てくださるとは。ありがとうございます」と驚いた様子であいさつをする園監督。
田野辺編集長は、園監督の初期作品を手伝った旧知の仲とのことで、園監督を巡るかなり突っ込んだ逸話を披露。その内の一つとして、1993年のカルトムービー『部屋』がベルリン国際映画祭に出品された際に、ベルリン映画祭で暴れて、ベルリン帰りの日本の評論家より「国辱映画」の烙印を押されることになったという事件を紹介すると、園監督は笑いながら、「暴れてないですよ、勝手に伝説を作らないでください」と笑いながら反論。こちらは、論理的な主義主張を持つベルリン国際映画祭の観客に「この映画のテーマは?」と聞かれた園監督が「ありません」と答えたところ、怒られただけ、というのが真相だったそうで、「香港では『テーマはない』と言うと拍手喝さいなんですけどね」と冗談めかしてコメントする園監督だった。
さらにトーク中には、田野辺編集長が、園監督の家の電気が止められていることを暴露。毎年のように新作を発表する園監督ほどの売れっ子でも、映画監督はお金が苦しいのだろうか、と会場が監督を心配する雰囲気に包まれたが、「(新作の編集作業で)ずっと編集室にこもっていたら、お金を払う時間がなくて、気づいたら電気が止められてしまいました。もう3日くらい暗いままなんで、目覚まし時計がどこにあるかわからなくて、今日は遅刻しそうになりました……、ってそんなことどうでもいいじゃないですか(笑)」とおどける明るい園監督の売れっ子ならではのエピソードに、会場はホッとした様ムードに。
そしてイベント中では、2011年1月8日から、ヒューマントラストシネマ渋谷で「園子温レトロスペクティブ(仮)」が実施されることが明かされた。こちらは園監督の過去の8ミリ作品から近作まで、園監督自らが「現時点での最高傑作」と自負する新作『冷たい熱帯魚』に連なる園監督の作品世界をスクリーンで体感できる機会になるという。
映画『冷たい熱帯魚』は2011年1月29日より全国公開