カヒミ・カリィ「犯人は自分のような気がしてきて…」犯人不明のカンヌ衝撃作はミヒャエル・ハネケ最高傑作!
第62回カンヌ国際映画祭パルムドール大賞を受賞した映画『白いリボン』の大ヒットを記念して21日、東京・銀座テアトルシネマでミュージシャンのカヒミ・カリィとアーティストのエドツワキが作品に潜む謎や闇に思いをめぐらせた。
第一次世界大戦前夜、ドイツ北部の小さな村を舞台に、次々と起こる不穏な事件に村人たちの精神がむしばまれていく姿を、巨匠ミヒャエル・ハネケ監督が美しいモノクローム映像で切り取る本作。事件の全容を明かさぬまま、物語が幕を閉じる展開に多くの観客が「いったい犯人は誰?」と考えずにはいられない内容だ。
カヒミは映画『ピアニスト』以来のハネケ監督ファンだといい、「精神が揺らぐような怖さを感じた。芸術に触れた充実感もあるし、まるでセラピストと会話したような不思議な作品」とコメント。プロテスタントの教えを忠実に守りながら暮らす村人の姿に、「実はうちの親がプロテスタントで、家庭環境に共通点も多い。観ているうちに、『犯人は自分なんじゃないか……』って怖くなった」と独自の感性で、観客の精神に訴えかける本作の特徴を語った。現在は1歳になる子どもの育児で、仕事も控え目。「子どもを見ていると、人間って純粋なのか、それとも生まれながら闇を持っているのか考えてしまった」と母親になったからこその視点も披露した。
また、「光と影の使い方が印象的。心がざわざわした」とカヒミが語ると、エドは「とてもひかれる世界観。フェルメールの絵画を切り取ったようなシーンもあるし、モノクロームはイマジネーションを喚起させる」とアーティスティックに分析していた。
映画『白いリボン』は『ファニーゲーム』などで知られるドイツの鬼才、ハネケ監督によるクライム・ミステリー。村で起こる不条理な出来事と子どもへの体罰から人間の心の中に潜む残酷な部分を浮き彫りにする。カンヌでの栄冠に加えて、ゴールデングローブ賞の外国語映画賞受賞、ドイツアカデミー賞での10部門受賞など、まさにハネケ監督の最高傑作と言うべき作品。日本でも熱心な映画ファンや、犯人が気になるリピーターたちが連日劇場に駆け付ける盛況ぶりだという。
映画『白いリボン』は銀座テアトルシネマ、新宿武蔵野館ほか全国順次公開中。