アン・リー監督の新作『ウッドストックがやってくる!』で主役を射止めたディミトリ・マーティンを直撃!
台湾出身の監督で、映画『グリーン・デスティニー』や『ブロークバック・マウンテン』などで世界を代表する監督となったアン・リーの新作『ウッドストックがやってくる!』について、彗星のごとく現れ主役の座を勝ち取ったディミトリ・マーティンが語った。
同作は1969年の夏、ニューヨーク州の田舎町で、モーテルを経営していた両親の家に戻ってきたエリオット(ディミトリ・マーティン)が、借金の返済に悩む両親の横で、ある日ウッドストック・フェスティバルの開催許可が取り下げられた記事を目にして、思い切った行動に出る……。今も語り継がれるあの伝説の野外コンサートがどのように形成されていったか、そしてあのコンサートが単にミュージシャンだけの集いではなく、いかに当時の若者の一大イベントであったかが良く認識できる映画に仕上がっている。
作家エリオット・タイバーが執筆したこの映画の原作について「初めてエリオットの原作を読んだときは心配だったんだ。結構過激なシーンもあるし、ゲイであることを自分で認識し始めるキャラクターでもあり、そんな主人公に僕は適役なのか?と思ったんだよ。僕自身はこれまでテレビのコメディ分野だけの仕事で、映画では全然仕事をしたことがなかったから、すごく挑戦しなければいけない役だと思ったんだ」と語った。実際に彼だけでなく多くの人々も、知名度の低い彼のキャスティングに関して製作前は懸念を示していたが、映画が完成されてからは、そんな言葉が全くなくなったほど、しっかりとした演技をしている。
キャスティングの過程については「本当に幸運だったんだ。この映画の配給会社フォーカス・フィーチャーズのCEOで、この映画の脚本も執筆しているのはジェームズ・シェイマスだけど、その彼の娘さんが、僕の出演したテレビ番組の映像をユーチューブでジェームズに見せたらしいんだよ。そのときに彼は僕に興味を持ってくれたのか、それから9か月後に彼とアン・リー監督と共に会合をしたんだ。そのときは、僕の姿や格好、そして醸し出す雰囲気が原作を執筆したエリオット・タイバーに似ていると言われて、さらに翌週のオーディションにも呼ばれたんだ。そこではアン・リー監督がビデオで撮影しながら、4つのシーンのオーディションを行ったんだ。それから2週間後に、君が主役を演じることになったよ!と言われ、天にも昇る気持ちだった!」とかなり思いがけないところから、出演が決まったようだ。
撮影中の出来事について「僕もスタンダップ・コメディアンとして仕事をしているから、映画内のどこかでジョークを入れられないかなぁと思っていたんだ。そんなある日、映画内のキャラクターの一人が沼にハマってしまうシーンがあるんだけれど、その後そのキャラクターは沼から丘の上を歩いて行くシーンになるはずだったが、それだけでは僕は面白くないんじゃないかと思って、脚本家のジェームズにパンツのお尻の部分を少し濡らしてみたら良いんじゃないかと助言したんだ。もちろん、経験不足の僕が助言をしている姿を見たアン・リー監督は、僕に対して懸念した顔をしていたんだよ……。ところが、それからすぐにアン・リー監督は横に居たアシスタントに、パンツを濡らしてくれ!と小声で言ったんだよ! ヤッター使われた!と思ったけれど、結局沼にハマったシーンだけは使われ、そのお尻の濡れたシーンは映画内には残されていなかったんだ(笑)」と残念がっていた。
ディミトリは、もともとNBCの人気トーク番組だった『ザ・トゥナイト・ショー・ウィズ・コナン・オブライアン』で脚本を執筆していた。今も、ソニー・ピクチャーズやドリームワークスが製作予定のコメディ作品の脚本も執筆しているらしく、今後も忙しくなりそうな注目の人物だ。
(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)