ラテン系女優ロージー・ペレス、ダンサーからアカデミー助演女優賞にノミネートされるまで
ニューヨークのリンカーン・センターで行われた映画『フィアレス』の再上映のイベントで、同作でアカデミー助演女優賞にノミネートされたロージー・ペレスが、この1993年の作品について振り返った。
ロージー・ペレス出演映画『それでも生きる子供たちへ』場面写真
同作は、飛行機事故から奇跡的に生還したことから、死の恐怖から開放された男(ジェフ・ブリッジス)の行動を通して、生と死を真摯に見つめたヒューマン・ドラマ。ラファエル・イグレシアスが執筆した同名小説を、映画『いまを生きる』や映画『刑事ジョン・ブック / 目撃者』のピーター・ウィアー監督が手掛けた作品。ロージー・ペレスは、飛行機事故で赤ちゃんを失った母親役を演じている。
出演経緯について「実は、この役に挑戦したいと思ったのは、わたしとエージェントとの口論からだったの。それは、いつもくだらないラテン系の役柄しかもらえないわたしは、彼女にラテン系の役だけじゃなく、白人の役でも探してきなさいよ!と愚痴をこぼしたの。すると彼女はすぐに電話をくれて、『あなたが気に入りそうな脚本があるんだけれど、すでにライバルが居て、ジョディ・フォスターやウィノナ・ライダーがこの役の候補になっているみたい』と言ったのよ。実際、私は85番目にオーディションしたけれど、運良く監督のピーターはわたしが良いと決めてくれたわ。けれど、配給会社の方は私のキャストに反対だったの……。だから、それからジェフ・ブリッジスと共に4度もカメラテストをさせられたわ(笑)」とかなり困難な道のりから、この役を勝ち取ったことを語った。
オーストラリアの巨匠ピーター・ウィアーとの仕事について「ピーターは、最初のリハーサルでわたしを見て、わたしがこの役と葛藤していると思ったそうなの。だから彼は、わたしをその後のリハーサルに参加させなかったわ。それはわたしの葛藤が、赤ちゃんを失ってもがき苦しんでいたこの役に適正だとピーターが判断したからなの。けれどわたしはそんなことを知らなくて、そのうえ当時はまだ若かったから、怒ってセットを離れようとしたわけ(笑)。すると、ピーターに呼び止められて、『馬鹿げているよ、君はまだ気づいていないが、この役で君は葛藤しなければいけないんだ、だから君はリハーサルをしなくていいんだ』と言われ、ようやく納得できたの。ただ撮影になると、当時のわたしは最初の1、2テイクだけの集中力しかなくて、いつもその後のテイクは全然駄目だったけれど、ピーターはいつも12~20テイクくらい撮影するから大変だった(笑)」と教えてくれた。
墜落した飛行機の映像について「この映画は全部で5か月間カリフォルニア州で撮影されたわ。そのうちバーバンクのスタジオでは飛行機のセットを含めた墜落するシーンを撮影して、ベイカーズフィールドでは墜落後のトウモロコシ畑のシーンを撮ったの。ベイカーズフィールドでは飛行機の残骸と、トウモロコシ畑が焼けているような匂いをスタッフが作り上げて、わたしたちが感情移入しやすい環境を作ってくれたから、すごく演じやすかったわ」と述べた。映画内のこのシーンは、衝撃的な印象を人々に植え付けている。
かつてロージーは、歌手のボビー・ブラウンやダイアナ・ロスの振り付けを担当していたこともあったダンサーだったが、スパイク・リーの映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』で注目を浴び、さらにこの『フィアレス』で女優の地位を確立していった。この映画は、数多くあるピーター・ウィアーの秀作の中で、日本ではあまり知られていないが、アメリカでは高く評価されてる作品だ。
(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)