低予算でもクオリティ高し!車のタイヤが殺人鬼と化して人を襲ってくる映画とは?
今、アメリカで話題となっている車のタイヤが殺人鬼と化して、人間を襲ってくる映画『ラバー(原題)/ Rubber』について、監督のカンタン・ドゥピューに話を聞いた。
同作は、砂漠に放置されていたタイヤ(タイヤ名はロバート)に突如として人間のような心が宿り動き始め、過酷な環境から町へ移動していくうちに、自分は相手に触れることなく、相手を破壊できる超能力を持ったタイヤだと認識し始める。そして彼は、ある日出会った美しい女性を追いかけながら、彼の行く手を阻むものたちを次々と破壊していくという個性的な作品。映画冒頭で、E.Tの体はなぜ茶色なのか?とか、映画には“特に理由のない”ことがたくさんあるとあえて前置きしてからこの映画は始まっていく……。一部カルト的なファンを持つ映画『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』を彷彿させる映画に仕上がっている。
まず気になったのは、低予算でありながら、どうやってタイヤをあれほど生きているように動かすことができたのか、ということだ。「多くの人たちから、このタイヤを一体どうやって動かしたのかと聞かれたよ! これだけ世の中にCGの映像が普及しているのにね……。まず、ラジコンのように動くタイヤのプロトタイプを3つ作ったんだ。そのうち1つしか動かなかったけれど、その1つがコントローラーを使いながらタイヤを急に止めたり、動かしたりすることができたんだ。あとは、操り人形のように人が指でタイヤを操りながら、タイヤをふらつかせる動きをさせてみた。だがら、CGでタイヤの映像を作って動かしてたわけじゃないんだ」と彼が語るように、まるで命が宿ったような動きをしている。
物(食べ物)が人を襲う映画では、『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』のようなカルト作品があるが、この映画を制作するうえで影響を受けた作品は「一番影響を受けたと言えるのは、おそらくスピルバーグ監督の映画『激突!』だと思う。古く汚らしい型のトラックだけで、あれほどの脅威を作りあげる彼の演出は素晴らしいと思う。それと、緊張感がもたらす恐怖も、本当に上手く編集できていたからね」とスピルバーグの作品を賞賛した後、『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』はまだ観ていないことも明かした。
このロバートというタイヤのキャラクター設定について「脚本を執筆していた時点では、ほとんど悪魔のようなキャラクター設定だったが、実際にタイヤのテスト施行をしていたときに、コントローラーで操っていたタイヤが、まるで飼い犬のように見えたから、このタイヤを犬のように水を飲んだり、寝たりもするキャラクター設定にして、人がなじみやすいキャラクターとして作り上げたんだ」とあえて冷血なキャラクター設定にはしなかったようだ。
最後にカンタン監督は、フランスでMr. Oizo(ミスター・オワゾ)という名でエレクトリック・ミュージシャンとしても活躍していて、この映画のサントラも自分で作り上げたものだ。彼は、この映画が仮に成功しても、次回作も自分の納得できる自主映画を作るつもりだと語った。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)