実録犯罪映画アイリッシュ・マフィアVSイタリアン・マフィア 70年代に英雄視された実在の人物の生涯を映画化
映画『パニッシャー』でメガホンを取ったジョナサン・ヘンズリー監督が手掛けたアイリッシュ・マフィアVSイタリアン・マフィアの実録犯罪映画『キル・ジ・アイリッシュマン(原題) / Kill the Irishman』について、主役を演じたレイ・スティーヴンソンが語った。
同作は、1970年代にオハイオ州クリーブランドで裏社会を牛耳っていたイタリアン・マフィアにケンカを売ったことで英雄視されていた実在のアイリッシュ・マフィア、ダニー・グリーン(レイ・スティーブンソン)の生涯を描き、2001年に出版されたリック・ポレロの「To Kill the Irishman : The War That Crippled Mafia』をベースに映画化した作品だ。脇役にクリストファー・ウォーケン、ヴィンセント・ドノフリオ、ヴァル・キルマー、そしてポール・ソルヴィーノという豪華な俳優陣が出演しているのも注目だ。
出演経緯についてレイは「ダニーは、ヴェールに覆い隠されたマフィアの世界で、大きな車に乗り、大きなひげを蓄えた非常に目に付くマフィアで、ただ世間に知られた男というだけじゃなく、脚本には人間味のあるストーリーが含まれていたところが気に入ったんだ。僕はダニーは、人が自分が何であるのかというルーツを知るために、すごくインスピレーションとなるクオリティを持った男だと思っているんだ。その良い例として、彼の家が敵対するイタリアン・マフィアに自宅を爆破された時に、瓦礫だらけになった家の周りを、近所に人たちが手作業でその瓦礫を取り除いてくれたらしんだ。おそらく、そんなマフィアはどこにも居ないと思うよ」。レイは、映画内でダニー・グリーンに見事に成り切っていた。
上記で挙げた素晴らしい個性派の俳優たちとの共演については「それぞれが素晴らしくて、それぞれが主役を演じることのできる俳優ばかりだ。彼らは皆、力強い雰囲気と活力を持った存在感のある俳優だが、あえてそれぞれのシーンでお互いが目立とうとはしなかったんだ。お互いの役割をしっかりと理解していたからだね。それに、当時のマフィアは個性的で、ある意味今の映画スターみたい存在感があった。だから、そんな個性的なマフィアを演じられる個性的な俳優たちが参加したのは、本当に素晴らしいと思ったよ」と語った。さらに脚本の良さがこれだけの俳優をそろえられたとも話してくれた。
かなりの数の車が爆破されているシーンがあるが、セットでの問題はなかったのだろうか。「実際に70年代に(マフィア同士の衝突で)爆破事件のあったクリーブランドは、現在はかなりきれいな街になっていて、ほとんどの爆破シーンはデトロイトで撮影していたんだ。ところがある日、撮影用のトラックに7つの銃弾が撃ち込まれていたりしたことがあった。最もヒドかったのは僕らが撮影していた近くのセブンイレブンの店の中である男が首を撃たれたときだった。そのときは、40分待ってようやく救急車が現れたが、その店の近辺がギャングエリアだったために、その撃たれた男を運び出せず、もう40分待って警察が来て、ようやく安全を確認してからその男を運び出そうとしていたのには驚いたよ。救急救命士が過去に明らかに撃たれたケースがあったから、そうしているんだろうけれど、すごい現実を見せられた感じがしたよ!」と衝撃の体験をしたことを告白した。
映画は、緊張感のあふれる素晴らしい実録映画に仕上がっている。最後にレイは25歳で俳優になると決意し、30代でようやく映画俳優となった遅咲きの俳優だが、映画内では威圧感のあるマフィアを演じ切っている。これから2人目の子どもが生まれると報告していた彼の次回作は、人気コミック「マイティ・ソー」の実写映画版だ。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)