二重被爆者・山口彊氏の活動描く映画『二重被爆~語り部・山口彊の遺言』公開が決定
1945年8月6日に広島で、9日に長崎で、2度被爆した山口彊(つとむ)氏の語り部としての活動を描いたドキュメンタリー映画『二重被爆~語り部・山口彊の遺言』が、今年7月に公開されることがわかった。2009年、末期の胃がんで入院していた山口氏は、被爆をテーマにした映画を作りたいという映画『タイタニック』『アバター』で知られるジェームズ・キャメロン監督の訪問を受けている。また山口氏は、「ベトちゃんドクちゃん」として知られるグエン・ドク氏、アメリカの平和活動家、キャサリン・サリバン氏などとも面会も果たしており、そうした面会の様子も収めた本作には、山口氏の平和への思いが詰まっている。
三菱重工長崎造船所の設計技師だった山口氏は、1945年5月より3か月の予定で出張した広島で、1度目の被爆。大やけどを負い、避難列車で向かった妻子が待つ長崎で2度目の原爆投下を受けた。その後、心配する家族の思いに応え、語り部になりたいという希望を持ちつつも、90歳まで語り部としての活動を行ってこなかったが、一念発起し、語り部としての活動を開始した。アメリカ人作家で、キャメロン監督の無二の親友であるチャールズ・ペレグリーノ氏の訪問を受けた山口氏は、キャメロン監督の「被爆をテーマにした映画を作りたい」という思いを知り、「被爆をテーマにした映画を観てみたい。わたしが死ぬ前に……」とキャメロン監督あてに手紙を送り、それを受け取ったキャメロン監督が、末期のガンで入院中の山口氏の見舞いに訪れたという。
くしくも、キャメロン監督の映画の完成を待たず、キャメロン監督の訪問から10日後の2010年1月4日、93歳で息を引き取った山口氏。しかし、アメリカの平和活動家、キャサリン・サリバン氏を、長崎市・浦上天主堂の被爆マリア像に案内し、「このマリアさんに力を貸してください。マリアさんと一緒に反核活動をしてください」と伝え、グエン・ドク氏に「ベトナム戦争の被害はひどかったと思います。戦争をしないことを世界全部に訴えたい。そのためにわたしは生かされているし、ドクさんも生かされている。長く生きてください。100まで生きてください」と励ましの言葉を送るなど、山口氏の功績は大きい。本作に描かれる山口氏の半生、語り部としての活動に、わたしたち日本人は、目を向ける必要があるのかもしれない。(編集部)
映画『二重被爆~語り部・山口彊の遺言』は7月公開予定