巨匠シドニー・ルメット監督、86歳で死去 『十二人の怒れる男』『狼たちの午後』など社会派ドラマで高い評価
名作映画『十二人の怒れる男』、アル・パチーノ主演『狼たちの午後』など社会派ドラマで高い評価を得ていたアメリカのシドニー・ルメット監督が9日、リンパ腫によりニューヨークの自宅にて86歳で死去した。ルメット監督の両親はポーランド人だが、生まれたのはアメリカでその後ニューヨークで育つ。テレビの演出家として活躍していたときに手がけたドラマ「十二人の怒れる男」を映画化し大ヒット、監督に転身した。陪審員裁判をサスペンスタッチに描いた骨太のドラマ『十二人の怒れる男』は後にベルリン国際映画祭の金熊賞を受賞、映画史に残る名作となる。
2007年に公開シドニー・ルメット監督作品 映画『その土曜日、7時58分』写真ギャラリー
その後も冷戦時代の核の恐怖を描く『未知への飛行』やポール・ニューマン主演の『評決』など骨太な社会派作品を制作する一方で、アル・パチーノが主演のハードボイルド『セルピコ』『狼たちの午後』やアガサ・クリスティの代表作の一つ『オリエント急行殺人事件』などエンターテインメント性に優れた映画を世に送り出し次々とヒットさせていった。
しかし、1999年に公開された映画『グロリア』では主演のシャロン・ストーンがラジー賞を受賞してしまうほど映画は酷評。80年代後半から90年代にかけては、その作品評価も低迷する。
しかし、2007年に公開されたフィリップ・シーモア・ホフマン、イーサン・ホーク、マリサ・トメイの出演した『その土曜日、7時58分』は、追いつめられた男の焦燥感と絶望感を見事に描き出し、高い評価を得ていた。そして第77回アカデミー賞では数々の功績をたたえられ名誉賞を贈られている。当時アカデミー協会は「ルメット氏はアメリカ映画界の歴史の中で最も重要な監督のひとりだ。彼の作品は、観客と映画史の両方に消すことのできない印象を残している」と語っていた。(編集部・下村麻美)