実在の84歳の小学生描く『おじいさんと草原の小学校』公開決定 ギネス記録認定もされた最高齢小学生の物語
世界最高齢の小学生としてギネス世界記録認定もされているキマニ・マルゲさんの実話を基にした映画『おじいさんと草原の小学校』が7月30日より日本公開されることが決定した。84歳の小学生として各国のメディアに取り上げられたこともあるキマニさんの、決して夢をあきらめない姿を描いた人間ドラマだ。
本作は、2003年に齢84にして小学校に入学したキマニ・マルゲさんの実話を、映画『ブーリン家の姉妹』のジャスティン・チャドウィックが監督した作品。周囲の反対を押し切ってキマニさんの小学校入学を認めた女性教師ジェーンや、キマニさんの約80歳年下の同級生たちとの交流を通して描かれるのは、いくつになっても夢を追い掛け続けるキマニさんの姿であり、そのあきらめない姿勢だ。
ケニアの無償教育制度のおかげで念願の小学校入学を果たしたキマニさんの勉強に懸ける情熱は、テント生活を余儀なくされたときも毎日4キロ歩いて学校へ通うなど、並々ならぬもの。その情熱は年の離れた同級生だけではなく、各国メディアに取り上げられるなど、結果的に政府にも影響を与えることとなる。しかし、ケニアとイギリスの植民地関係といった政治的背景が回想シーンを通してしっかりと語られており、そのことがキマニさんを単なるサクセスストーリーの主人公ではなく歴史の犠牲者として描くことにつながっており、ストーリーにぐっと重みが加わっている。独立戦争で家族や友人を殺されただけでなく、自らも拷問に掛けられるなどといった記憶を抱えながら、少しずつ夢に近づいていくキマニさんの姿は観た人を元気づけるに違いない。
キマニさんは2003年に小学校へ入学した後、2009年に胃がんで亡くなるまで獣医になるという夢をあきらめずに勉強を続けた。2005年には首席に選ばれるほど優秀な生徒であり、同年に国連の国際議会でスピーチの場を与えられると、今なお1億人以上いるという学校へ通えない子どもたちの窮状を訴えた。キマニさんがスピーチで世界中に訴えた教育問題は本作の大きなテーマともなっており、自身を描いた映画をきっかけに多くの人がそのことについて議論を交わすようになることは、キマニさんの宿願でもあるかもしれない。(編集部・福田麗)
映画『おじいさんと草原の小学校』は7月30日より岩波ホールほか全国順次公開