ハリウッドが次の『ハリポタ』『トワイライト』求めヤング・アダルト小説を青田買い!全米880万部「ザ・ハンガー・ゲームス」に期待
米映画業界では“フランチャイズ”という呼ばれ方をしている映画のシリーズ『ハリー・ポッター』フランチャイズに代表されるティーンファンを中心としたヤング・アダルト市場は、略して“YA”と言われており、その市場は映画スタジオにとっては金脈のようなものである。うまく当たればとてつもない額の収益が舞い込んでくる。
ヤング・アダルト市場の稼ぎ頭である『ハリポタ』は今夏に終了、そしてもうひとつのフランチャイズ大物である『トワイライト・サーガ』シリーズは来年終了してしまう。この現状に際して、大手映画スタジオは次の金脈を見つけようと、次世代のフランチャイズを担える作品探しに奔走中である。
フランチャイズ不足の可能性を目の前に、映画スタジオはすでにヤング・アダルト市場でベストセラーとなっている本の映画化権を買い占め始めており、そのラインナップが早くも話題となっている。
次世代に強力フランチャイズになりそうな作品を紹介すると、まずはスザンヌ・コリンズ作『ザ・ハンガー・ゲームス(原作)/The Hunger Games』があげられる。22歳という若さですでにヤング・アダルト作家のトップを走り億万長者入りしているというからすごい。小説の内容は、実際に命を懸けて戦うテレビの生き残りゲームで、お互いに惹(ひ)かれつつも戦うことになってしまうティーンの男女が主役。
このヤング・アダルト小説は全米ティーンの間で大人気を博しており今までに880万部という数を売り上げている。この作品は、ライオンズ・ゲート・エンタテインメントが7,500万ドル(約60億円)の製作予算をかけてすでに撮影準備に入っており、公開は来年3月に予定されている。そしてもし、『ザ・ハンガー・ゲームス』が映画として大ヒットすれば2作目『キャッチング・ファイアー(原題)/Catching Fire』、3作目『モッキンジェイ(原題)/Mockingjay』へとなだれ込む公算となっている。
『トワイライト・サーガ』シリーズで大もうけをした映画スタジオのサミット社は目ぼしいヤング・アダルト小説が店頭に並ぶ前から映画化権を買収するという手法をとっており、来月出版予定の『ディヴァージェント(原題)/Divergent』という近未来に住むティーンが主人公のSFスリラーは映画化の話が加速中である。
パラマウント・ピクチャーズの親会社であるバイアコム社はこの度、『トワイライト・サーガ』の脚本家を招いて人気のヤング・アダルト小説である『アースシード(原題)/Earthseed』の映画化脚本の執筆を開始させたと報道されており、前者が『トワイライト・サーガ』の脚本家を使うならこちらはその出演者を使ってやると、20世紀フォックス社は同シリーズでオオカミ青年ジェイコブ役で人気を得たテイラー・ロートナーを主役として契約し、ティーンSF『インカーセロン(原題)/Incarceron』の製作を発表した。誤って近未来の牢獄に入れられてしまったティーンが主人公のサスペンスらしい。
ヤング・アダルト市場は金脈のようだと先に言ったが、まさにそのとおりで当たらないときは全然当たらず出資側は大損する事になる。近年の歴史的失敗作となってしまった2007年映画『ライラの冒険 黄金の羅針盤』は1億8000万ドル(約144億円)の製作費を費やしながら収益は7,000万ドル(約56億円)と、製作・配給のニューライン・シネマにとっては手痛い結果となっている。
同社は『ロード・オブ・ザ・リング』フランチャイズで大成功をした映画会社だが、『ライラの冒険 黄金の羅針盤』の失敗がたたってヤング・アダルト市場では遅れを取っている。しかし、映画業界も人生もとにかくギャンブルのようなもの。やってみなければ何事も始まらないわけで、ニューラインもヤング・アダルト作品を数本同時に手がける予定である。果たしてヤング・アダルトの金脈を掘り当てるのはどこのスタジオになるか、興味深いところである。(本文中1ドル=80円で計算)(文・取材:L.A.明美・トスト/Akemi Tosto)