ザ・リバティーンズのドキュメンタリー上映など、話題満載、チケット完売続出のイースト・エンド映画祭
4月27日から5月2日(現地時間)までロンドンで開催された、第10回イースト・エンド映画祭は、チケットが完売する上映作品が続出するほどの人気を呼んだ。常にとがった映画を世に送り出してきた本映画祭は、開催10年目を迎え、ますますパワーアップしているようだ。
いち早くチケットが完売したのは、今回の上映がワールド・プレミアとなった、ロジャー・サージェント監督のドキュメンタリー映画『ザ・リバティーンズ:ゼア・アー・ノー・イノセント・バイスタンダーズ(原題)/The Libertines: There are No Innocent Bystanders』。サージェント監督は、人気バンド、ザ・リバティーンズを撮り続けてきたカメラマンでもある。映画祭期間中には、監督が撮ってきたザ・リバティーンズの写真展も開催された。
ザ・リバティーンズの結成から解散、昨年の一時的な再結成を内側から追った本作は、本映画祭のオープニング作品でもある。プレミアには、サージェント監督のほかに、ザ・リバティーンズのメンバーの参加も予告されていた。だが、カール・バラー、ジョン・ハッサール、ゲイリー・パウエルが顔を見せた中、ボーカルを務めたピーター・ドハーティだけは現れなかった。ドハーティは、同バンドの解散以降、モデルのケイト・モスとの交際、破局や、ドラッグ使用、所持など、多くのスキャンダルが報じられている。
一般にはトラブル続きのロッカーと認知されているドハーティだが、その音楽性、特に作詞の能力は高く評価されていて、フランスでは悲劇的な詩人として人気がある。現在は、俳優として出演した映画『コンフェッション・オブ・ア・チャイルド・オブ・ザ・センチュリー(原題)/Confession of a Child of the Century』のフランスでの撮影を終えたところでもある。共演したシャルロット・ゲンズブールは、彼の姿から、父セルジュ・ゲンズブールを思い起こしたそうだ。セルジュもアルコールでのトラブルなどが多かったが、作詞家、作曲家、歌手、そして俳優、監督でもあり、フランスで愛された。
また、40年前の作品ながらチケットが完売となったのが、デレクターズ・カット版が上映された、ケン・ラッセル監督による1971年の映画『肉体の悪魔』。聖職者を登場人物として過激な性描写が展開し、当時は教会などから批判が続出したことでも有名な作品だ。本作がカットされずにラッセル監督のオリジナル版のままイギリスで上映されるのは、完成してから40年間で今回が2度目ということからも、いかに作品への反発が大きかったかがわかる。当日はラッセル監督がディスカッションに登場した。
ほかにルーマニア映画特集や、ロシア、ジャマイカ、インドなどの映画も上映され、日本からは、橋本直樹監督映画『臍帯』、チヒロ・アメミヤ監督の日米合作短編ドキュメンタリー映画『グランパズ・ウェット・ドリーム(原題) / Grandpa’s Wet Dream』が参加したほか、宮崎駿監督映画『千と千尋の神隠し』もソニック・フィルムというイベントの中で上映された。これは音楽と映画を組み合わせたイベントで、映画上映のほか、イギリスのロックバンド、ギルモッツの演奏も披露された。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)