マジックの世界ジュニア大会で優勝した日本人、ひときわ光る!マジック界のスーパースター、ランス・バートン明かす
世界中を魅了してきた天才マジシャン、ランス・バートンが主催する世界ジュニア大会「ワールド・マジック・セミナー・ティーンズ・コンテスト」を描いたドキュメンタリー作品『メイク・ビリーブ(原題) / Make Believe』について、主催者ランス・バートンとジェイ・クレイ・トゥイール監督が語った。
同作は、アメリカのラスベガスで2009年に開催された「ワールド・マジック・セミナー・ティーンズ・コンテスト」に参加した世界中の天才少年少女マジシャンたちの中から6人に密着し、コンテストが行われる前から数か月にわたってドキュメントした映画で、今後のマジック界を背負って立つ若きマジシャンたちの活躍が注目の作品だ。
ランスは、いつごろからマジックを始めたのかとの質問に「5歳ぐらいのときから始めたんだ。あれは、僕のホームタウンであるケンタッキー州ルイヴィルで行われたマジック・ショーで、マジシャン、ハリー・コリンズのマジックを最初に観たんだ。そのさいに、ハリーのマジックのボランティアとして観客から舞台に上げられたのが、この僕だったんだよ。彼は、僕の耳の後ろから銀のコインを取り出して見せて、僕を驚かせてくれた。それから、このようなマジックをして生計を立てているなんて素晴らしいと思ったのが、このマジック界に入るきっかけになったんだ」と明かす。
今作の撮影経緯について「僕が映画内で少女のコンテスタントととして参加していたクリスティン・ランバートと、ほかの何人かの少年少女マジシャンを追いかけて撮影していたさいに、彼らが参加する予定だったこの『ワールド・マジック・セミナー・ティーンズ・コンテスト』のことを知ったんだ。そこで、このイベントの主催者のランスに会って、協力を要請したことがこの映画につながったんだよ」と述べたジェイ監督は、さらに「この中にデレックという少年がいて、最初彼はすごく内気な少年だったが、いったんステージの上に立つと、自信を持った素晴らしい表情でパフォーマンスをこなすことができるんだ」とマジックを通して変化していく少年少女が多いことも語った。
この少年少女のコンテスタントの中で、ひときわ際立っていたのが日本人の原大樹だった「個人的には、この映画に参加しているどの少年少女も特別で、彼らが今後もしマジシャンになろうと思うなら、その中の誰もがプロのマジシャンになれると思われる逸材ばかりだった。もちろん、5年後に彼らがその道に進みたいと思っているかは、僕にはわからないけれどね(笑)。大樹だが、これまで僕は45年間もマジックをやっているが、彼の技術の面だけ観ても素晴らしく、特に彼がトランプを指で操る技術は、すごく優雅で、スムースで簡単に見えるが、実際には全く簡単なことでないんだよ! それに彼には技術面だけでなく、ステージの上での特別な要素(輝き)みたいのを持っているよ」と原大樹が今後期待すべきマジシャンであることも教えてくれた。
数多くの舞台を経験しているランスだが、これまでステージの上で失敗したことはあるのだろうか。「これまで1万5,000回ものショーを行ってきたから、失敗はたくさんあるよ(笑)! その中には、マジックで使うハトなどの鳥が観客の方に行ってしまって、僕が観客の席に降りて、わざわざ捕まえなければいけないこともあった。ほかには、ステージの上でパンツが破けたこともあったね(笑)。さらに、ステージに上がってもらった子どもが大泣きしたこともあったなぁ。そんな中でいちばん怖かったのは、心臓発作で亡くなったお年寄りもいたことだったよ……」と一流のマジシャンでもどうしようもない状況になってしまうことはあるようだ。
映画は、それぞれ違う環境で育った世界中の少年少女マジシャンが、緊張感を保ちながらマジックを披露していく姿が微笑ましく映っている。ランス・バートンは、これから現れる少年少女マジシャンたちへのプラットホームを、しっかりと形成してあげているようだ。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)