70年代生まれの男たち3人、自主映画の時代から『マイ・バック・ページ』にいたるまで…山下敦弘監督が仲間たちと青春を振り返る
16日、シネマート六本木で映画『マイ・バック・ページ』酔いどれトークショーが開催され、本作で東大全共闘議長・唐谷義朗を演じた長塚圭史、京大全共闘議長・前橋勇を演じた山内圭哉、そして山下敦弘監督が出席。酒を片手に、青春の1ページを振り返った。
映画の舞台が1969年から1972年を描いているということで、長塚(1975年生まれ)、山内(1971年生まれ)、山下監督(1976年生まれ)という70年代生まれの男たち3人がビールを片手に酔いどれトークをしようという趣旨で行われた本イベント。山下監督と長塚が2003年の映画『リアリズムの宿』でタッグを組んだことを筆頭に、3人とも非常に仲が良いとのことで、この日は来場者にもビールが配られるなど、リラックスムードの中でトークが進められた。
青春を振り返って、というトークのお題を与えられ「そうか……、俺らも青春を振り返るような歳になったんだな」と話した山内。若いころに低予算の自主映画を撮っていた山下監督が、今は大きな予算の映画を撮っていることが感慨深いようで、「昔から知っているからな~。大きな現場をまわして、立派になったな」としみじみ。その言葉を受けた山下監督も「(山内の妻で山下監督の『どんてん生活』に出演していた、今枝)真紀さんが、立派になったねって泣くんですよね」とコメント。
『リアリズムの宿』で主演を務めた長塚も「『リアリズムの宿』のときはえらい大変な撮影だったよね。弁当は冷たくてまずいし、現場には(共演者の)山本(浩司)さんしかいなくて寂しい状態だった。それが今回はパッと見たら、妻夫木(聡)くんがいて、何やってるんだよと思いましたよ」とその感慨深さは共有している様子。さらに「でも、そんな中で(脚本の)向井康介くんや(撮影の)近藤龍人くんがいるんだよね。それがいいよね」と低予算映画のころからのクルーで、本作にも参加している仲間の名を出しながら、山下監督の出世ぶりをしみじみと喜ぶ二人だった。
トーク中には、『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』の本田隆一監督、『海炭市叙景』の熊切和嘉監督など、山下監督の母校である大阪芸術大学が輩出した監督たちが本作にカメオ出演していることも明かされた。そのことについて山下監督は「大学の歴史がありますよね。(出演している監督は)おれの中の関西カリスマオールスターズなんですよ。今までカメオ出演とかは、嫌だなと思っていたんですけど、もういいかなと思って、出てもらいました」と照れ臭そうにコメント。酔ったこともあってか、「普段はあまり言わないんですけど、僕の意図でつけた、ある演出に自信があるんで、観てください。長い映画ですけど」と語った上で、「キャストがみんな素晴らしい。パワーがありすぎて疲れてしまうかもしれない。でもそれにのれれば楽しめると思います」と本作に自信を見せる山下監督だった。
映画『マイ・バック・ページ』は、評論家の川本三郎が自身の新聞社入社時代の経験をつづったノンフィクションを映画化した青春ドラマ。理想に燃える記者が左翼思想の学生と出会い、奇妙なきずなで結ばれていくことで直面する葛藤(かっとう)、そして挫折を描き出す。(取材・文:壬生智裕)
映画『マイ・バック・ページ』は5月28日より全国公開