海老蔵、瑛太の父親として素で号泣…三池崇史監督、その感性を絶賛!
第64回カンヌ国際映画祭
映画『一命』で第64回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に参加中の三池崇史監督と主演俳優の瑛太が現地時間20日、インタビューに応じた。約5分間のスタンディングオベーションを受けた公式上映から一夜明け、瑛太は「プレッシャーや不安もあったけど今日になったら気持ちが変わって、ここに来られて光栄だな、本当に良い経験だったんだなって実感しています」と初のカンヌを満喫しているようだ。
同作品は、滝口康彦原作の「異聞浪人記」が原作。浪人・津雲半四郎(市川海老蔵)が、無惨な最後を遂げた娘・美穂(満島ひかり)、その夫・求女(瑛太)の報われぬ魂を救うべく、彼らを見捨てた武家社会に立ち向かう復讐劇だ。1962年に小林正樹監督が仲代達矢主演で『切腹』として製作しているが、三池監督は「短編小説が原作で非常にシンプルですけど、シェイクスピア劇と一緒で(人間のあらゆる感情やドラマが)全部詰まっている。だから、リメイクというよりは原作からもう一回創ったという感じですね。ただ、昔にきちんと創られているので維持になることもない。今見ても、技術的にもスタッフの力量的にもスゴイですよ」と作品の魅力を語った。
しかし毎度、我々に驚きを与えてくれる三池監督のこと。時代劇という古典の中にも三池色が潜んでいる。その最もたるが、実質年齢は5歳しか離れていない海老蔵が、瑛太の義父の設定で、劇中「父上」と呼んでいることだ。
三池監督はこの大胆なキャスティングについて「そう見えることも可能かなと思って。だって今なんて、親子に見えない人たちがいっぱいいるじゃないですか」とさらり。 実際、撮影では海老蔵の父親ぶりを物語るエピソードがあったという。瑛太演じる求女が切腹をするシーンを撮影していた時のことだ。海老蔵がモニターに駆け寄ってきてその場面を見ていたのだが、目からポロポロ涙を流していたという。
三池監督がその時の様子を語る。「『おれはこいつを助けられなかったのか……』って泣いているんですよ(笑)。ほかにも、求女の幼少時代のシーンでも同じように泣いていて、なんて感受性が強いんだと」。
そんな海老蔵について瑛太も「普通とか常識という言葉があるのなら、そこからパッとはみ出してきて、グッっと(自分の顔面まで)距離を縮めてくれた。その距離の使い方だったり、人に対する気遣いやエネルギー、愛情の大きさをすごく感じました。撮影以外でも父親として見守ってくれた感じ? そうですね」と目を細めた。
これで瑛太も、晴れて三池組への仲間入りを果たしたワケだが、三池監督と言えば、鈴木京香に『ゼブラーマン』でゼブラナースを、浅野忠信が『殺し屋1』でマゾなヤクザを演じさせたように、そのムチャぶりは留まることを知らない。瑛太にも次回、とんでもない役が与えられる可能があるが、その覚悟はあるか? と尋ねると、すかさず三池監督から「だって瑛太君は『ワイルド7』に出たんですよ(笑)。おれら世代から言うと、『ワイルド7』になるなんてすげぇーな、ですよ」とツッコミが入った。瑛太も「何でもやりたいです」と三池監督との再タッグにやる気を見せていた。(取材・文:カンヌ・中山治美)
映画『一命』は10月公開