「布川事件」44年にわたる戦い実を結ぶ ショージとタカオに無罪判決!
現在公開中のドキュメンタリー映画『ショージとタカオ』に登場する、強盗殺人事件「布川事件」の犯人として有罪判決を受け、仮釈放までの29年間にわたる獄中生活を余儀なくされた桜井昌司さんと杉山卓男さんの再審の判決公判が24日、水戸地裁土浦支部で行なわれ、2人に無罪が言いわたされた。1967年の事件発生から約44年、2人と、彼らを支えた人々の戦いがようやく実ることとなった。
映画『ショージとタカオ』は1967年8月に茨城県で1人暮らしの男性が殺害された強盗殺人事件「布川事件」の犯人とされ、1978年に無期懲役が確定した桜井氏と杉山氏の、1996年に仮釈放された後の姿を追った作品。物的証拠がとぼしい中、目撃証言と強要されたという自白によって有罪とされた両氏が、再審請求を起こし、公判に臨む2010年夏までの14年間に密着、2人の名誉を回復するための戦いと、「フツーのおじさん」になるために、仕事探しや、廃屋同然の我が家での暮らしなどに奮闘する姿を追う。再審判決は、映画公開間近の3月16日に出されるはずだったが、同月11日に発生した東日本大震災の影響により延期となっていた。
本作を手掛けた井出洋子監督は、仮釈放された当時、桜井さんと杉山さんが「本当に自由になる日まで闘い続けます」と宣言をしたころにふれながら、「それから15年。逮捕されてからは44年。やっと、やっと本当の自由になる日が来たと思うと、私も心が熱くなります。ショージとタカオのお二人がフツーのおじさんを目指して歩いて来た道のりをあらためて振り返り、お疲れさま!よかったですねと、無罪になることを心からお祝いしたい気持ちです」と喜びのコメント。一方、無罪を勝ち取るまでの、あまりにも長い道のりを振り返り「この国の司法のありようを、わたしたち一人ひとりがもっと自分ごととして考えていかなくてはならないとも思います」と改めて日本の司法制度に警鈴を鳴らした。
無罪を勝ち取った桜井氏と杉山氏は、今月27日に明治大学の駿河台キャンパスにて行なわれるトークイベントにおいて、現在の思いと司法への思いをを語る予定だ。晴れて無罪となったとはいえ、獄中で過ごすことになった29年という時間は、取り戻すにはあまりにも長い。「フツーのおじさん」を目指す桜井さんと杉山さんの戦いは、これからが本番といえるのかもしれない。(編集部・入倉功一)
映画『ショージとタカオ』は新宿K's cinema、横浜ニューテアトルほかにて公開中