宮本亜門、急きょ原発問題を劇中に取り入れることを明言 出演者の山本太郎を「一本気なところが役に結びついてる」
ブロードウェイ・ミュージカル「太平洋序曲」の稽古場取材が1日、神奈川芸術劇場で行われ、本編の一部が公開された。演出を務める宮本亜門と主演の八嶋智人はサービス精神たっぷりに本作の見どころを語ったほか、同作に出演する、所属事務所を自ら退社した俳優・山本太郎についても言及した。
映画やドラマ、舞台など幅広い活躍を見せる八嶋だが、ミュージカルには今回が初出演。最初は戸惑うことも多かったそうで「ミュージカルは何小節目のどこでどう動くかが決まっているので、自分の間合いでできない。『あれ、もう次の人歌っちゃっている!?』みたいな」と、面白おかしく苦労を語った。だがこの日は八嶋自身の希望で本人の出番は少なめ。この理由について「まだ見せたらヤバいからですか?」と記者から質問が飛ぶと、八嶋は敏感に反応。「失敬な、いつだって見せられますよ! ただの出し惜しみですよ」とおどけた様子でキレたまではよかったものの、テンションが上がり過ぎたのか「舞台はお客さんが劇場に入って初めて完成するもの。そういう意味を込めて僕はお客さんとひとつになりたい。なのでこんなマスコミ向けにはやらないんです……」と報道陣を敵に回すかのような発言。これにはさすがの宮本も「こんな報道陣って失礼な!」と突っ込みを入れ、「おれが一番失礼でしたね」と小さくなっていた八嶋だった。
上演まで3週間を切った本作だが、宮本はさらに台本が変更になることを示唆。現在日本で深刻な問題となっている原発問題を劇中に取り入れる構想を明かし「われわれが日本を客観的に見るという作品なので、日本で現実に起きていることと重ねないといけない。(そうすることによって)今の日本がどうなっているのかわかりやすいし、日本に力があることもわかる」と熱く語った。本作には、原発反対のデモに参加して自ら所属事務所を退社するなど、その動向に注目が集まっている山本太郎も出演することとなっている。宮本は「一本気なところや、何を正しいと思って何を大切にしたいかが役と結びついている」とぴったりの配役であることを明かす一方で、八嶋はここでもユーモアたっぷりに「いろいろ聞きたいことはあるでしょうけど、今の山本太郎を知りたいならどうぞ(観に来てください)。答えはそこにあります」と本作をアピールした。
「太平洋序曲」は初の東洋人演出家として、宮本亜門がブロードウェイ・デビューを果たした作品。江戸時代末期の日本を舞台に、鎖国を続けようとする人々と西洋文化を受け入れようとする人々の対立を描いている。(取材・文:肥沼和之)
ブロードウェイ・ミュージカル「太平洋序曲」は6月17日~7月3日まで神奈川芸術劇場で上演