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ジャーナリスト上杉隆氏、記者クラブが牛耳る現状は独裁国家以下!『ヤバい経済学』トークショー

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日本メディアの現状にもの申す! ジャーナリスト引退宣言を行った上杉隆氏
日本メディアの現状にもの申す! ジャーナリスト引退宣言を行った上杉隆氏

 19日、シアターN渋谷で、映画『ヤバい経済学』から「日本経済を斬る!」と題したトークショーが行われ、今年いっぱいでのジャーナリスト引退宣言を行った上杉隆氏が「ヤバい」トークショーを行った。

映画『ヤバい経済学』写真ギャラリー

 経済学者のスティーヴン・D・レヴィットと、ジャーナリストのスティーヴン・J・ダブナーが著したベストセラーを映画化した本作。「子どもは名前で人生が決まる」「ニューヨークで1990年代に犯罪が激減した理由」「賞金で高校生の成績が伸びるのか」といった多彩なテーマを、統計的なデータを駆使して「人々の思い込みを打破」するべく、ひも解いていこうというユニークな内容となっている。ダブナーはニューヨークタイムズの記者としてキャリアをスタートさせた気鋭のジャーナリストであるが、実は上杉氏もニューヨークタイムズの元記者だったという共通項がある。「この作品も、ニューヨークタイムス方式というか、それぞれの価値観と方法論で、いろんな事例の取材をやっていくというのが特色なんです」と本作のユニークな内容を解説する上杉氏だった。

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 また、劇中では大相撲の八百長について言及している点も日本人には興味深い点だろう。劇中で「八百長は無い」と断言する元横綱・曙に対し、ジャーナリストの武田頼政氏が、相撲界の八百長疑惑や、時津風部屋の力士暴行死事件などについて赤裸々に語るくだりがある。上杉氏によると、このインタビューを受けたのは、相撲界の闇を次々と暴いていく武田氏を相撲協会が提訴するに至り、大手メディアが武田氏に距離を置き始めた頃だったという。「だいたい日本で干されると、海外の取材が多くなるんです。僕も放射能問題で干されたら、逆に世界中から多く取材を受けるようになった」と自虐的なジョークで会場を笑わせるも、「今となっては武田さんの取材が正しかったことが証明されましたよね。報道は時代の空気とともに変わりますから」と語る上杉氏。

 日本でジャーナリスト活動をする上で、世界でも日本にしかない「記者クラブ」制度という問題は切り離せない問題となる。「簡単に言えば、『直ちに人体に放射能の影響があるものではありません』というような、政府や東電などが言ったことであれば、どんなにでたらめなことであろうが、それが正しいと報道し続けることです。そこから外れた報道をやろうとすると消されてしまう。日本の言論の偉い人に限って、言論の多様性を認めようとしない」とメディアの現状を語る上杉氏。「もちろん新聞でもテレビでも素晴らしい報道がたくさんあります。それら全てを否定するものではありません。ただ、今のテレビ、新聞、政府が行っている独裁国家以下のような状況を直せば、自然と議論とか、言論の健全性も保たれていくのではないでしょうか。決して難しい取材はいらないんです。原発にも推進派、反対派がいるように、どちらかに偏るのではなく、多様な価値観を提供してほしい」とせつせつと訴えかけていた。

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 ちなみに武田氏は先日、大相撲とは全く関係のない「ブルーインパルス」という書籍を出版、高い評価を受けている。上杉氏はそんな武田氏の状況に触れながら「僕自身も、記者クラブという問題に疲れました。原発報道もうんざり。海洋汚染やメルトダウンなど、自分が書いてきたことも、デマ扱いされるし……。しかもそれが3、4週間遅れて報じられる。別に手柄をとりたいわけではなく、それを何でそのときに発表しなかったんだ。そうすれば助かった人もいただろうに……。今はそういう無力感があるので、これからは(上杉氏の好きな)ゴルフ方面で活躍しようかと思っています」と冗談交じりに語っていた。しかし、その奥底には、なかなか改善されることのない日本の現状を憂(うれ)いているようにも見えた。(取材・文:壬生智裕)

映画『ヤバい経済学』は新宿武蔵野館、シアターN渋谷ほか全国順次公開中

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