米『サンクタム』vs.日『ラビット・ホラー』日米3D対決が9月に勃発!飛び出すか奥に広がるか!?3Dの明日はどっちだ?
映画『呪怨』の清水崇監督がメガホンを取った、満島ひかり主演の3Dホラー映画『ラビット・ホラー3D』の初日が9月17日に、そして映画『アバター』のジェームズ・キャメロンが製作総指揮を務めるアドベンチャー映画『サンクタム』の初日が9月16日と、3D映画の世界をけん引してきた2人のクリエイターの新作が同時期に公開決定し、あたかも日米3D対決の様相を呈している。
デジタル技術の登場を背景に、3D映画ブームを迎えている現在の映画界。今回のブームの要因として、デジタル化による画質の向上、そして観客の目を疲れさせないための演出技法の確立などが挙げられるが、その流れはキャメロン監督の大ヒット作『アバター』が決定づけたことはいうまでもない。『サンクタム』では、『アバター』のステレオグラファー(3D映像を監修する技術者)のチャック・コミスキーが参加するほか、キャメロン監督が開発したフュージョン3Dカメラ・システムも一部で使用されるなど、『アバター』の3D映像をさらに進化させた映像世界が特徴となっている。特にフュージョン3Dカメラ・システムは、深海などの厳しい環境での撮影が可能になるようにチューンナップ。急な勾配(こうばい)の絶壁を急降下し、地底世界の底知れぬ深みへといざなうショットは息を飲むような迫力となっている。
一方、日本映画初の実写長編デジタル3D映画『戦慄迷宮3D THE SHOCK LABYRINTH』のメガホンを取った清水監督の2本目となる3D映画『ラビット・ホラー3D』には、『恋する惑星』『レディ・イン・ザ・ウォーター』など世界各国で活躍するクリストファー・ドイルが撮影監督として参加。さらにパナソニックが開発した一体型二眼式フルHD-3Dカメラ「AG-3DA1」を映画では初使用。従来の重量級になりがちだった3Dカメラと違い、小型で機動性の高いこのカメラによって、ドイルならではの流麗なカメラワークもより生きるようになった。
3D映像の研究・推進団体「3Dコンソーシアム」が発表した安全ガイドラインの影響などもあり、現在、日本の3D映像制作の世界では「なるべく画面の前には飛び出さないように」という流れが主流になっている。しかし、『ラビット・ホラー3D』では、奥行きを強調した映像と同時に、目の前に「飛び出す」アトクラション的な映像をうまく組み合わせて、3D映像の新しい可能性を追求。効果的な3D演出方法については、誰もが試行錯誤を重ねているこの世界にあって、飛び出す映像と、奥に広がる映像という、互いに両極端なスタイルを打ち出した両作。これらの映像を見比べてみて、3D映画の今後がどのように進化していくのか、占ってみてはいかがだろうか。(取材・文:壬生智裕)
映画『ラビット・ホラー3D』は9月17日より、映画『サンクタム』は9月16日より全国公開