トム・ハンクスを直撃!新作で監督・主演に挑戦!リストラされた男が大学に通い再び青春に目覚める『ラリー・クラウン』
映画『フィラデルフィア』や『フォレスト・ガンプ/一期一会』で二度のアカデミー賞主演男優賞を受賞し、映画『すべてをあなたに』では監督にも挑戦したトム・ハンクスが再び監督としてメガホンを取った作品『ラリー・クラウン(原題) / Larry Crowne』について語った。
同作は、不況のあおりを受けてスーパーマーケットの仕事をリストラされたラリー・クラウン(トム・ハンクス)は、急きょ資格を取ろうと大学に通い始めることを決意する。彼は授業を受けて徐々にクラスメイトと仲良くなり、さらに女教師のメルセデス(ジュリア・ロバーツ)と思いがけぬ恋に落ちていくというロマンティック・コメディ作品。
新作の製作の経緯は「今から数年前に、僕のオフィスで映画『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』の女優二ア・ヴァルダロスと話していたさいに『もし、大学に行かなかったことを理由に解雇された男が、大学に初めて通い始めてジュリア・ロバーツのような女教師に出会ったら』というアイデアを彼女に伝えたら、彼女が数か月後に脚本を仕上げてきたんだ。そして徐々に脚本の中の欠点を修正していったが、それからはお互いにそれぞれの仕事が重なって、結局製作するまでの3年間に3回も改稿してしまったんだ」と二ア・ヴァルダロスとの共同作であることを語った後、さらにトムは「この映画は、ラリー自身の決意や再発見を通して、彼が(人生を)再構築していく映画になっているんだよ」と明かした。
なぜ、俳優業に専念していたトムが、再び監督する気になったのだろうか。「実は、ニアと共同で脚本を執筆したさいに、何人かの監督に声をかけたんだよ。そこで、まず一般の人たちが知らなければならない映画界のことは、監督にとって最悪なのは、俳優が自分のアイデアを持ち込んで、『僕を主役に監督をしてくれないか?』と頼まれることなんだ……(笑)。なぜなら監督は、自分のアイデアで映画を製作したいと思っているからね。それに、(俳優のアイデアであるため)セットで俳優に指示されることも嫌う監督もいるんだ。だから僕が依頼したほとんどの監督は、脚本を送ってくれとは言ってきたが、その後は何の音沙汰もなかったよ……(笑)」と自分の思い通りにはいかなかったようだ。ところが「長年脚本を自分自身で修正してきたため、いつの間にか他の監督がこの作品を手掛けるくらいなら、自分がメガホンを取るべきではないかと思い始めたんだよ」と明かした。ちなみに、トムは『すべてをあなたに』で以前に監督に挑戦したが、かなり前の話であるため、いったんトムが監督をすることには決まったものの、現在の経済状況下から資金繰りには苦労したことも話してくれた。
長い間、俳優として活躍してきたトムが、将来の俳優や監督達に捧げるアドバイスは「今の若者たちには、自分が成りたいと思っていることへの準備をできるツールが揃っている。ただ、それ(職業)に成りたいと思ったら、毎日それになるための努力をしなければいけない。それと、他の人が誘ってくれるのも待っていても駄目だと思う。良い例を挙げると、僕の友人にスピルバーグが居るが、彼のもとにはとてつもない数の脚本が毎日送られてくる。彼はとてもその全部を読むことができなかったが、彼のもとに届いた短編作品は、どんなものでもすべて観ていたことがあったらしい。だって機材を揃え、仲間たちと撮影してから編集して、ようやくそれを送ってきたわけだからね。彼は、その苦労を理解していたからだと思う。何か作品に出演したり製作をすれば、必ず誰かが観てくれると信じて作るべきだ」と情熱的に語った。
最後に、映画内にはトムがバイクにヘルメットをかぶって乗っているシーンがあるが、そのシーンの撮影前にヘアーメイクが、ヘルメットを取ったときのぐちゃぐちゃの髪をもとに戻すには時間が掛かると指摘したらしいが、あえてヘルメットをかぶり、ぐちゃぐちゃの髪をもとに戻さず、ぐちゃぐちゃの髪の状態のままシーンを撮り終えたという彼らしいエピソードを話した。映画は、ジュリア・ロバーツとトム・ハンクスのやり取りが魅力の映画に仕上がっている。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)