大ひんしゅく映画『ムカデ人間』いよいよ日本でも一大ブーム!? 松尾スズキ「監督は人間の尊厳についてどう考えているのか」
5日、人間の肛門と口をつなぎ合わせるという内容で、世間から不謹慎だと非難ごうごうだったはずが、渋谷の上映館シネクイントでまさかの大ヒットスタートを切ったカルトホラー『ムカデ人間』のヒットを記念して、ムカデ人間1号となるカツロー役の北村昭博と、作家・俳優・演出家として活躍する松尾スズキが限界ギリギリのトークショーを行った。
米大人気アニメ「サウスパーク」でパロディーが放送されたり、トム・クルーズやクエンティン・タランティーノ監督が注目するなど、一大ブームを巻き起こしている本作。日本でも、7月2日の公開初日以降、連日大入りを記録。関係者に「大入袋」ならぬ「ムカデ袋」が配られるなど、ついに日本でもムカデブームの兆しが見えてきたようだ。
そんな本作にいち早く注目していたのが松尾。彼は映画のチラシや予告編などに、「人とのつながりは大切だ。でも、つながりすぎるとろくなことにならない。この映画は大切なことを教えてくれた」という秀逸なコメントを寄せており、本作の主演を務める北村に「ぜひ会いたい」と希望したことから、今回のトークショーが実現した。
本作について「作品のクオリティーが意外に高いのがビックリしますよね。『ムカデ人間』(という発想から)で映画を作るというと、もっとチープな印象を受けるじゃないですか」と切り出した松尾は、「(作品を作るとき)表現者として究極の地獄って何だろうって考えるんですけど、そこであの(ムカデ人間になる)状況を作り出すとはね。しかも、先頭がまったく言葉の通じない外国人だし。よくあんないじわるなことを考えつきますよね」とアイデアに感心することしきりだった。
そんな松尾は「ほかの作品を観てみたい。人間の尊厳についてどう考えているのか知りたい」と本作のメガホンを取ったトム・シックス監督に興味津々な様子。そこで北村が「紹介しましょうか?」と提案すると、「うーん……」とうなった後「そこには2つ3つハードルがありそうですね……」とコメント。希代の変態監督(!?)であるシックス監督とは、微妙に距離をおきたそうな松尾に会場は笑いに包まれた。
本作は、シャム双生児分離手術の専門医が、生涯の夢である、人間同士をつなぎ合わせた「人間ムカデ」を作り上げようとするカルトホラー。劇中のムカデ人間さながら、3人一組となり包帯で体の一部を「つなげる」ことで鑑賞料金が1000円に割り引かれる「ムカデ割引」も連日好調で、5日までにのべ24人がつながって来場し、割引を受けたそう。この好調を受けて、大阪、福岡の上映館でも「ムカデ割引」を実施することが決定した。さらに、北村の故郷である高知県、さらに宮城県仙台での上映も決定。勢いづいた「ムカデの輪」はまだまだ日本全国をつなげていきそうだ。
なお、7月9日の土曜日には「北村昭博ディナーショー付き『ムカデ人間』鑑賞ツアー」が実施される。これは映画鑑賞前に、「ムカデ人間1号」こと北村を囲んで食事などを楽しんだ後、参加者みんなで本作を鑑賞しようというツアー。参加希望者はツイッターの『ムカデ人間』公式アカウント(@mukade_ningen)をフォローし、ダイレクトメールを送信。本作が観たいけど「一人で観るのは不安」「一緒に観に行く相手がいない」という人にとっては、みんなとつながりながら、『ムカデ人間』を観るチャンスかもしれない。(取材・文:壬生智裕)
映画『ムカデ人間』は渋谷シネクイントで公開中