ユダヤ人一斉検挙事件から生き延びた歴史の生証人が来日、学生たちに貴重な体験を語る!
8日、過酷な運命に翻弄(ほんろう)された子どもたちを描いた真実の映画『黄色い星の子供たち』のモデルになったジョゼフ・ヴァイスマンさんが来日し、日本シネアーツ試写室で行われた早稲田大学学生たちのトークセッションで、当時の体験について語った。
本作で描かれているのは、フランス政府によるユダヤ人一斉検挙「ヴェル・ディヴ事件」。80歳という高齢でありながら、しっかりとした足取りで現れたジョゼフさんは、その事件を生き延びた一人。歴史の証言者としての使命感から今回の来日を決意したことを明かすと、一斉検挙された自身の両親と姉妹がアウシュビッツ収容所のガス室に送られたことを告白。戦後、一度だけ現地を訪れたというジョゼフさんは、「友人からはつらくなるから行くな、と止められたが、その場所は家族が死んだ場所であり、訪れることは生きている自分の義務であり、わたしなりの愛情表現のひとつだと思った」と胸を詰まらせ、当時のことを振り返って思わず涙ぐんでいた。
ジョゼフさんは現在、フランスの学校などで、若い人たちに自分の体験を語って聞かせているという。学生から「何を大切に語らなければいけないと思っていますか?」という質問を受けたジョゼフさんは、「今を生きる若い人たちに過去の人間であるわたしが、何を残せるかをきちんと伝えることが大切だと思っている。これから先、何が起きるかわからないから」と丁寧に答えていた。激動の時代を生きたジョゼフさんの言葉と触れ合うことのできた今回のトークセッションは、日本の若い学生たちにとって、素晴らしい機会となったに違いない。
映画『黄色い星の子供たち』は、1942年の夏、ナチス占領下のパリで、フランス政府によって行われたユダヤ人一斉検挙「ヴェル・ディヴ事件」の真実を、家族と引き離された子どもたちの視点から描いた感動の実話。元ジャーナリストのローズ・ボッシュ監督がメガホンを取り、調査と研究に3年の歳月を費やし撮り上げた。フランスにとって負の歴史でもある事件を描いた本作は、昨年本国フランスで公開され、300万人を動員する大ヒットを記録した。キャストには、映画『オーケストラ!』のメラニー・ロラン、フランスを代表する名優ジャン・レノらが名を連ねている。(取材・文:福住佐知子)
映画『黄色い星の子供たち』は7月23日よりTOHOシネマズシャンテほか全国順次公開