映画もバリアフリー!視覚障害者のために副音声で解説するバリアフリー版音声ガイドにTOKYO NO.1 SOUL SETのBIKKEが参加
6日、東京都新宿区内のスタジオで映画『人生、ここにあり!』のバリアフリー版音声ガイドの収録が行われ、TOKYO NO.1 SOUL SETのヴォーカル、リリック担当のBIKKEが初ナレーションに挑戦した。
これまで映画を観る機会が限られていた視覚障害者のために、視覚情報を副音声で解説する「音声ガイド」システムが注目を集めている。これは画面に映る情景や景色、人物の動きや表情、場所や時間の移り変わりといった視覚情報を音声情報でカバーするもので、FM送信機などでガイドを飛ばし、聴きたい人だけがラジオでその副音声を受信、イヤホンで聴くというシステムとなっている。このため、ほかの観客の映画鑑賞を妨げることなく、まさに「バリアフリー」な状態で、一緒になって映画を楽しむことが出来るというわけだ。
松竹やアスミック・エース エンタテインメントといった映画会社が音声ガイド素材作成に意欲的であるということもあり、これまでにも多数の邦画作品のバリアフリー上映素材が作成されてきた。しかし、邦画と違ってセリフなどを吹替える手間がかかるため、洋画作品のバリアフリー上映用音声が作成される機会は少なかった。今回のバリアフリー素材の制作ディレクターである松田高加子氏は、「音声ガイドを入れれば映画を楽しめる人が増えるのに、日本では映画ファンであっても音声ガイドの存在はまだまだ知られていない。今回の上映をきっかけに、映画会社の皆さんの意識が高まってもらえれば」と映画業界における音声ガイドのさらなる普及に期待を寄せる。
そして今回、音声解説用のナレーションを担当するのがBIKKEだ。これまでJINRO、日産マーチ、日清カップヌードル、からだ巡茶といった商品のCMで、短いナレーションの経験は多数あるが、ここまで長いナレーションは自身初だという。「話が来たときはうれしかったですよ。僕もこう見えて結構いい歳なので、なかなか新しいことをやらせてくれないんです。たとえばBIKKEなんて名前を今さら変えられないのと一緒で。まあ、うちの社長の名前がリリー・フランキーなので、そういう意味では安心なんですけど」と冗談交じりに喜びを語るBIKKE。そして音声ガイドについても「そういうシステムがあるなんて知りませんでした。みんなで一緒に映画を楽しめるなんていいですよね」とその意義に共感しているようだった。
BIKKE起用の理由として「男子校みたいな映画の雰囲気にピッタリ」とディレクターの松田氏が語る通り、今回のナレーションはどこかとぼけた味わいのあるユーモラスなものになった。TOKYO NO.1 SOUL SETでは、語りかけるようなラップスタイルが特徴的なBIKKEだが、本作で披露したナレーションは、単なる場面解説という役割を通り越して、一つの作品として非常に興味深いものとなっている。これまで音声ガイドを聞いたことのない人も、これを機会に触れてみてはいかがだろうか。
『人生、ここにあり!』は、本国イタリアで40万人超の動員を記録し、54週ロングランの大ヒットを記録したヒューマンコメディー。精神病院が廃止されたイタリアを舞台に、それまで病院に閉じ込めらた患者たちが外に出て、一般社会で暮らせるような地域つくりを目指したという実話を基にしている。ともすれば堅く、重くなりがちな題材を、愛とユーモアで包んだ人間賛歌となっている。(取材・文:壬生智裕)
映画『人生、ここにあり!』は7月23日よりシネスイッチ銀座ほかにて全国公開(BIKKEがナレーションを務めるバリアフリー上映は7月23日11:10~、7月31日16:15~、8月9日18:50~の3回、FMラジオのレンタルあり)