集中力、持続力、ストレス発散、リハビリ効果!折り紙1枚にいろいろな効果!この夏は電気のいらないエコロジー遊び
5日、東京・千代田区のセルバンテス文化センターで映画『ペーパーバード 幸せは翼にのって』公開記念イベントが行われ、折り紙アーティストの西田シャトナーのトークショーと、大人のためのスペインの折り紙講座が行われた。
1930年代のスペイン内戦後、厳しい思想統制や言論統制などが行われたフランコ独裁政権下という激動の時代を舞台に、喜劇役者のホルヘと10歳の少年ミゲルの、かけがえのないきずなが描かれる本作。メガホンをとったエミリオ・アラゴン監督が「紙で作られた鳥によって、非常に繊細(せんさい)な人間のきずなというものを表現したかった」と語る通り、本作には折り紙の鳥が重要なモチーフとして使用されているのも特徴だ。登場シーンはそれほど多くはないものの、映画を観れば、きっと折り紙を折りたくなるような内容となっている。
そこで今回のイベントに呼ばれたのが、折り紙アーティストの西田。彼は1990年代演劇界で注目を集めた劇団・惑星ピスタチオを、俳優の佐々木蔵之介と共に旗揚げした演劇人としても知られている。1枚の正方形の紙をまったく切ることなく、折り曲げたり、ねじったりとしながら、リアルな造形物を作り出す西田作品のち密さは、折り紙業界でも高い評価を受けており、テレビ番組「人生が変わる!1分間の深イイ話」でも紹介されたことがある。この日は彼が折ったバルタン星人やカブトムシ、クワガタなども披露。クワガタの角のギザギザなど、細かい部分までリアルに再現した西田の作品を見た会場からは驚嘆の声が起きていた。
本作を観たという西田は「すごく(物語が)丁寧に描かれているのに、スピーディーな映画だなと。心配になったり、ドキドキハラハラしながら観ていましたけど、最後にはこんな幸せな終わりか方があるんだろうかと思いました」と第34回モントリオール国際映画祭、第37回シアトル国際映画祭で観客賞を受賞した本作が気に入った様子。そして「折り紙ってすごく和風なものだと思われるかもしれませんが、実はアメリカにもフランスにもあるんです。特にスペインは、いい折り紙作家が多いんですよ」と意外な事実を付け加えた。
そんな流れから、この日の来場者たちにも折り紙が配られ、映画に登場するスペイン風の「鳥」の折り紙講座が開催されることになった。ゆっくりとていねいに解説する西田の後に続いて折り紙を折る来場者たち。スペインの「鳥」の折り紙は、日本の「鶴」よりも前後に広がったような形になっており、どことなく力強さも感じさせるもの。やがて「折れた!」といった歓喜の声が会場に響き渡ると、西田も「皆さん、破かないできちんと折れたみたいでよかった」とうれしそうな表情で見つめていた。
集中力、持続力を高め、ストレス発散、リハビリ効果などが期待できる折り紙。会場に集まった「大人たち」は、この電気のいらないエコロジーな遊びを手にし、「出来た! 出来た!」と童心に返ったように喜んでいた。(取材・文:壬生智裕)
映画『ペーパーバード 幸せは翼にのって』は8月13日より銀座テアトルシネマにて公開