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津波で妻を失った陸前高田市長、震災から半年経ち被災地の現状を伝える書籍を出版 3月10日に新築完成した家が流された友人も

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「テレビで見るよりも被災地、被災者は悲惨な状態です」戸羽太陸前高田市長
「テレビで見るよりも被災地、被災者は悲惨な状態です」戸羽太陸前高田市長

20日、新宿のブックファーストで行われた書籍「被災地の本当の話をしよう 陸前高田市長が綴るあの日とこれから」の出版講演会に著者で現陸前高田市長の戸羽太(とば ふとし)氏が登場し、津波により甚大な被害を受けた陸前高田市の震災当日の様子や復興への道筋などを集まった聴講者の前でつまびらかにした。

 今年2月に激戦の選挙を乗り越え市長に就任した戸羽氏。その後間もなく発生した東日本大震災により市長を務める陸前高田市は壊滅的な被害を受け妻も津波で失ってしまう。大きな拍手で迎えられた戸羽氏は出版の動機を「震災からもうすぐ半年経ちなかなか報道されないようになってきました。現状を知ってもらいたかった。執筆の時間はなかなかなかったが現状をぜひわかっていただきたくて出版しました」と明かした。

 「震災当時は市役所にいました。地震があり津波が来ても50センチか1メートルだろうという話だったので2階か3階に避難すればなんとかなるだろうと考え住民の避難の手助けをしていました。でも避難場所だった3階建ての市民会館は全部水につかって見えなくなってしまいました。私は役所の屋上の屋根に引き上げてもらい、なんとか命拾いしましたが、そこにも水が来ました。屋上から町を一望するとすべての家が流されていました。ただただぼうぜんと見ている状況でした」と当時の惨状なまなましく語った。あまりにも悲惨な現実にすすり泣く聴講者の姿もあった。

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 市の現状については「がれきの撤去は進んでいます。ですが、ただがれきの山ができているだけの状況ではあります。また仕事がないし、仮設住宅を出た後の不安など住民のストレスは多い。私の住んでいた高田町は被害が大きかったところで、家族全員生きている家はほとんどなかった。被害者が多すぎて法要も合同で一日6回に分けて供養していただきました」。

 そして津波で流されてしまった妻については「家族を失うとは想定していなかった」と絞り出すような声で語り「中1と5年生の子どもたちに母親の話はあまりしないようにしている。おがんでもらったときには子どもたちが涙を流さなかったので癒えてきているのかなと思います。妻には『ちゃんと育てていきますから』としか言えなかった。しっかりしないといけないと思った」と気丈にふるまった。

 また「私の携帯電話でこの世にいない方は200件くらいあります」や「友人で3月10日に新しくなった自分の家に入って次の日に流されてしまった人がいます。一泊3,400万円の家だったと、もう笑うしかない」など当事者にしかわからないエピソードも明かしてくれた。

 ほかに今月の27、28日に復興イベントを行うことも話し「民間の経営感覚をとりいれるためワタミの渡邉美樹さんに市の参与になっていただきました。商店街のお店も家も流されて、義援金は分配させていただいていますが、事業主は基本的に所得がない。そんな時に商店の方たちの気持ちが折れないようにそれぞれお店を出してもらいお客さんに来ていただくのがイベントの趣旨です。商売の魅力を忘れないでもらいたい。時間がある方にはぜひとも陸前高田市に来ていただきたい」とイベントをアピールした。

 最後に「テレビで見るよりも被災地、被災者は悲惨な状態です。何千軒と家があったところが全部さら地です。ただ私たちは復興に向かって歩いている。あいつらがんばっているなというところを見ていただきたい。必ず復興させます」と力強く語った。

書籍「被災地の本当の話をしよう 陸前高田市長が綴るあの日とこれから」はワニブックスより発売中で価格は798円(税込)

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