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原節子、田中絹代、淡島千景、往年の名女優をより美しく輝かせた黒澤明や溝口健二ら巨匠たちを振り返る

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ドフトエフスキー×黒澤の文芸大作『白痴』
ドフトエフスキー×黒澤の文芸大作『白痴』 - (c)1951松竹株式会社

 溝口健二黒澤明といった日本が世界に誇る巨匠たちは、その演出手腕で名女優たちから美しさや魅力を引き出してきた。そんな銀幕に輝いた名女優と巨匠との関係を振り返っていこう。

 歴代の映画監督たちの中でも、女性映画の名匠とうたわれたのが溝口健二。ヴェネチア国際映画祭で賞を獲得した映画『西鶴一代女』『山椒大夫』をはじめ、女優の田中絹代とは再三コンビを組んで名作を誕生させてきた。女優と演出家の不倫の末の悲劇を描いた映画『女優須磨子の恋』での田中は、大先輩でもある名女優・松井須磨子の役。体を酷使して舞台けいこに励み、ステージで歌い踊り、また愛する人を追って自害する、激動の人生を駆け抜けた女優を全身全霊で演じた田中の姿を溝口がじっくりとらえ、田中の演技力を堪能することができる。プライベートでの蜜月関係をうわさされた溝口と田中を思わせることもあって、2人を知る上では必見の作品だろう。

 かたや、女性を撮ることを唯一の弱点とすることで知られる黒澤明によって、新たな魅力を引き出されたのが伝説的女優の原節子だ。映画『わが青春に悔なし』『白痴』の2本の黒澤の作品で原が演じるのは、小津安二郎作品での“永遠の処女”を感じさせるヒロイン像とは百八十度異なる強烈な女。天使とも悪魔とも判断しかねるファム・ファタール、那須妙子にふんした『白痴』は、日本人離れした彫りの深い美しさをもつ原だからこそ演じられたといえる。高慢な高笑いや迫力ある表情は、黒澤の作品でなければ観られない。映画『羅生門』を製作する当初、黒澤は京マチ子が演じた役を原節子にと考えていたというから、黒澤にとって原節子が特別な女優だったのは間違いないはずだ。

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 今年2月のベルリン国際映画祭で特集上映が組まれ、再評価の声も上がる渋谷実にとって欠かせないヒロインは、手塚治虫の漫画「リボンの騎士」の主人公のモデルでもある淡島千景だ。映画『自由学校』『やっさもっさ』『もず』などでアプレゲール(戦後)の女性の生き方を、渋谷・淡島コンビは時にユーモラスに時に辛辣(しんらつ)に表現してきた。また、カンヌ国際映画祭やアカデミー賞などで世界中の同時代人から評価を受けた小林正樹の作品に多数出演する岸惠子も、映画『からみ合い』などでその洗練されたクールな美ぼうをスクリーンに焼き付けた。

 ため息の出るような美しさや圧倒的な存在感は、この時代の女優にはかなわない。日本映画に彩りを添えたヒロインたちを、監督と女優という視点から観賞してみるのもいいかもしれない。(岩永めぐみ)

 映画『白痴』は8月22日午前8:00よりWOWOWにて放送。

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