『ヱヴァ』の庵野プロデュース作!映画に愛された故・林由美香さんの“最新作”『監督失格』がいよいよ初日!
3日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで映画『監督失格』初日舞台あいさつが行われ、本作のプロデューサーの庵野秀明と平野勝之監督、そして「由美香ママ」こと人気ラーメン店「野方ホープ」の小栗冨美代社長が、女優・林由美香さんの遺影と共に登壇、今は天国にいる由美香さんと共に、彼女の「最新作」の初日を祝った。
本作はおよそ1年ほど前に完成。一足先に試写を観たマスコミ関係者などの間で、その壮絶な愛の形が早くも話題騒然。つい先立って行われた完成報告会見でも庵野が「こういったインディーズの映画が(業界最大手のシネコン)TOHOシネマズさんのご厚意と熱意で上映されることは異例なことで、一歩前進となった。これからの映画のためにもこの作品を成功させたい」と意気込みを語っていたことがあった。そんな思いもあり、この日の庵野は「ようやく公開にこぎつけて、良かったと思います」と喜びのコメント。対する平野監督も「完成してからがここまでが長かったので、今日は生まれた、というような、出産を終えたような気分です」と感無量の表情だった。
この日はインディーズ作品が大手シネコンで初日を迎える感動の舞台あいさつ……になるはずだったが、庵野監督の「実はまだ完成品を観ていないんですよ」とポツリと発したコメントが、会場に集まった人たちの頭の中に「疑問符」を生じさせた。司会者も「それはどういう……?」と庵野のコメントの真意を把握しきれなかった様子だったが、先ほどのコメントを補足するように「観るチャンスがなかったんです。ラッシュの時点で(いい作品だと)分かったから、ちゃんとした完成品を観るのは『ヱヴァ』が終った後でいいかな」というひょうひょうとしたコメントに会場は大爆笑。平野監督も「そういえばそうですよね、今、初めて気付いた」とプロデューサーの突然の告白に驚いた様子だったが、当の庵野は「僕はもう来年の方(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』)に頭が切り替わっているんです。それが終わったら、ちゃんと観ます」とまったく意に介していないようだった。
そんな和やかな舞台あいさつが終ろうとしたとき、会場には人気ラーメン店「野方ホープ」の生みの親であり、由美香さんの母親でもある小栗社長がサプライズ登場。「平野監督、その他のスタッフの方が一生懸命協力して、この映画を完成させてくれたことを心より感謝していますし、まことに光栄であります」とスタッフの労をねぎらう小栗社長の両手には、力強い表情で前を見据える由美香さんの遺影が。生涯で200本以上の映画に出演し、酒と映画をこよなく愛した女優・林由美香に見守られながらも、彼女の「最新作」がいよいよ公開だ。
本作は、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズの庵野秀明が、実写映画を初プロデュースした感涙のドキュメンタリー。35歳の誕生日直前に急逝した女優、林由美香さんをめぐる、大切な人の喪失とそれに向き合う人々の再生を描いたドキュメントであり、人間賛歌だ。(取材・文:壬生智裕)
映画『監督失格』はTOHOシネマズ六本木ヒルズにて独占先行公開、