アカデミー賞受賞作品のクリエーターが若者にエール!「必要なのは忍耐、信じること、失望という言葉を忘れること!」
7日、第83回アカデミー賞で短編アニメ映画賞を受賞した映画『ザ・ロスト・シング(原題) / The Lost Thing』でアニメーションと編集を担当したレオ・ベーカーが御茶ノ水のデジタルハリウッド東京本校にて特別講義を開催し、本作の製作秘話やクリエーターを目指す学生へのアドバイスなどを熱く語った。
レオはこれまでに映画『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』や『ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛』などVFXアーティストとして数多くの映画製作に携わってきたクリエーター。アニメーションを担当した映画『ザ・ロスト・シング(原題)』は、オスカー獲得をはじめ、世界各国の映画祭で数多くの賞を受賞。アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア2011」でも紹介された話題作だ。
本作は、行き場がわからなくなった「モノ(The Lost Thing )」を見つけた少年が、居場所のない「モノ」たちの集まるユートピアへ連れて行ってあげる、少し不思議で心温まる物語。特別講義では、わずか15分ほどの本作を4名のスタッフでおよそ3年半かけて完成させたという入魂のエピソードが語られた。中でもスタッフが最も神経を使ったのが、「モノ」の感情表現だという。外見は、タコつぼから6本の足と尻尾が出ている生物なのだが、「感情表現に大切な顔がなく、様々な感情を動きで表現しなければならないので神経を使いました」とレオ。「犬の動きなどを参考にしましたね」と作品をシーンごとにわけ、その手法を学生に向けて解説した。
また、少年と「モノ」が一緒に写るシーンでは、その場面で演出したい感情や状況に応じ、「モノ」の大きさがときに3倍近く変わっていることなどを説明し、「シーンやアングルによっては、(キャラクターを)そのままの大きさではなく、リサイズするのも表現のひとつ」とアニメならではの演出手法を説明。この手法はスタジオジブリ作品でも見られるという知識などを交えながら、そのほかにも細部に込めたこだわりや苦労などを熱く語り、学生たちを強くうなずかせていた。
そんなレオは、クリエーターを目指す学生たちに「最初からいいものは作れません。わたしも最初は制作会社にアプローチして冷たい言葉を浴びせられてきました。それでも続けることで実力がついたし、絶対にやりたいという強い意志を持つことも大切だと感じました」と力強いエールを送った。そして、アカデミー賞受賞までの道のりを振り返り「必要なのはまず忍耐、そして信じることです。それから失望という言葉を忘れてください。はじめからすごいことをしようと思わずに、小さなプロジェクトを少しずつ積み重ねていくのが大事です」と勇気づけた。また、レオ自身子どものころから物作りが好きで、絵を描いたり陶芸(とうげい)をしたりと、いろいろとしてきたといい、最後には「クリエイティブなこと以外にも、スケボーをしたりバイクに乗ったりいろいろなことをしてほしい。そういうものが引き出しになります」と自身の経験を踏まえたアドバイスも送っていた。(取材・文:中村好伸)