阿部寛、演じた主人公のモデルとなった故・仲宗根陽さんの夫人・美幸さんからの手紙に目を潤ませ「今も彼はエールを送っている」
1日、映画『天国からのエール』初日舞台あいさつが新宿バルト9にて行われ、主演の阿部寛、ミムラ、桜庭ななみ、矢野聖人、森崎ウィン、野村周平、熊澤誓人監督が登壇。主人公のモデルとなった故・仲宗根陽さんの夫人、仲宗根美幸さんがスペシャルゲストとして登場し手紙を読み上げて、仲宗根さんを演じた阿部は「阿部さんは、人の痛みがわかるお方です。阿部さんが演じていただいたことを、天国の主人も喜んでいると思います」とメッセージを送られ、目を潤ませていた。
本作は沖縄の美ら海水族館で有名な本部町にある無料の音楽スタジオ「あじさい音楽村」を、夢を追う高校生たちのために私財を投じて設立し、2009年にがんのため42歳で亡くなった故・仲宗根陽(なかそねひかる)さんの実話を基にした作品。主人公の大城陽を演じた阿部は、登場するなり「陽さん!」と役柄の名前で声援を受けて照れ笑い。その後「『はやぶさ/HAYABUSA』よりこっちを選んでいただいてうれしいです(笑)。向こうも素晴らしい映画ですけど」とユーモラスに語って会場を沸かせた後「『この仲宗根さんという人物を是非紹介したい』と思いながら、多くの宣伝をやらせてもらいました。仲宗根さんが遺したものは、現代社会にとってすごく良いものだと思います。映画を観たみなさんが心の中に、自分なりのいいものを持って帰っていただけると信じています」と言葉に力を込めた。
そして、トーク中盤には、故・仲宗根陽さんの夫人、仲宗根美幸さんが登壇。陽さんの遺志を受け継ぎ「あじさい音楽村」の代表を務めながら、沖縄での撮影時に毎日のようにキャストを見舞って交流を深めてきた美幸さんは、この日スタッフ&キャストへ感謝の思いをしたためた手紙を披露。そのメッセージを聞いた阿部は「最初は『本当にこんな人物がいたのか?』とふに落ちなかったけど、現場に行って奥さんが出迎えてくれたとき、仲宗根さんが後ろに立っているような感じがしました。そのとき『この映画を成功させたい。仲宗根さんをしっかり演じなければ』と思いました。彼の遺志を継いだ若い子たちが毎日練習している姿を見ると、今も彼はその場所にいて支えている、エールを送っていると思います」と大きな瞳を潤ませながら語った。
一方、陽が設立したスタジオでバンド活動に打ち込む女子高生・比嘉アヤを演じた桜庭ななみも、この日登場すると多くの男性ファンから「ななみちゃん!」コールを受けてにっこり。美幸さんが読み上げる手紙を聞いた桜庭は「撮影中、(美幸さんから)『あじさい村の子はもっとちゃんとしていたし、歌もうまかった』と怒られるんじゃないかと思っていましたが(笑)、温かく見守ってくださいました。この作品に参加できて良かったです」とキュートな笑顔を浮かべていた。
映画『天国からのエール』は2006年にNHKでドキュメンタリーが放送され、2010年にはノンフィクション「僕らの歌は弁当屋で生まれた・YELL」として書籍も発刊された実話を映画化した感動作。小さな弁当屋を営みながら、近所の若者たちのために無料の音楽スタジオを設立した主人公(阿部)が、ガンに冒され自らの余命を知りながらも、懸命に若者たちを応援し続ける姿を描く。(古河優)
映画『天国からのエール』は全国公開中