釜山国際映画祭史上最速の7秒でチケット売り切れ!ソ・ジソプ主演『ただ君だけ』はチャップリンの『街の灯』や名作『めぐり逢い』をほうふつ
第16回釜山国際映画祭(BIFF)の出品作、307本のなかから栄えあるオープニング作品に選ばれた『ただ君だけ(原題)』。観賞チケットが発売されるや否や、BIFF史上最速の7秒で売り切れたという話題作の記者会見が現地で行われ、国内外の多くのメディアが詰めかけた。
孤児院育ちの元ボクサーと、視力を失いかけている電話オペレーターの甘くせつないラブストーリーは、チャップリンの『街の灯』やハリウッドの名作『めぐり逢い』を思わせる、クラシカルな味わい。長編デビュー作『フラワー・アイランド』でBIFFの「ニューカレンツ」賞に輝いた、作家性の強いソン・イルゴン監督と王道メロドラマの意外な組み合わせながら、キャストの魅力を生かした良質作に仕上がっている。
『街の灯』のファンだというソン監督は、「古典的でファンタジックな物語に、いかにリアリティをもたらすかが課題だった」と振り返る。二人の感情の揺れを強調するため、「クローズアップにこだわった」とも語る監督の期待に応えたのは、『映画は映画だ』のソ・ジソプとドラマ「トンイ」のハン・ヒョジュだ。お気に入りのシーンについて、彼の割れた腹筋に目を見張る「ワークアウトしているシーンです」とジソプがちゃめっ気たっぷりに答えれば、ヒョジュも「尊敬するソ・ジソブ先輩が上手にリードしてくれたキスシーンです」と、取材陣へのリップサービスも忘れない。
「メロドラマはキャラクターの感情を長時間、保つことが難しい」と明かすジソプは、ボクシングのトレーニング中に「張り切りすぎて両手首のじん帯が損傷してしまいました」と告白。ケガをしたまま撮影に臨んだとは到底思えない、彼の力強いアクションも見どころだ。(取材・文:柴田メグミ)