『わが母の記』原田眞人監督、井上靖氏の家を使用して撮影したことを明かす
開催中の第16回釜山国際映画祭で、クロージングセレモニーで上映された映画『わが母の記』の原田眞人監督の記者会見が行われた。
釜山に到着したばかりだという監督は、新しいメイン会場となる“映画の殿堂”の大きさに驚いた様子で、「10年前に来たとき以上に、本当に大きな映画祭になったなと、この建物を目の前にして、改めて驚いています」とあいさつした。14日に行われるクロージングでの上映がアジアでは初めて一般の観客に見てもらう機会となることに、とても興奮していると続けた。
映画「わが母の記」は、作家・井上靖の自伝的小説「わが母の記~花の下・月の光・雪の面~」を基にした映画。幼いころに母が自分を叔母の家に置き去りにしたことを忘れられない小説家の伊上洪作が、記憶を失くしていく母の世話をしながら、娘たちとの関係を通して、各々の心の中にある本当の家族への思いを描き、本年度のモントリオール世界映画祭で審査員特別グランプリ賞を受賞している。
なぜ井上靖の自伝的小説を映画にしたか問われると、最初は「しろばんば」という小説に興味を持ったと言う。「叔母と少年の洪作、そして敵として実母が登場する関係性を映画化したいと思ったのですが、奇妙な三角関係を映画化したいと読み続けて改めて見つけたのが、“わが母の記”だったのです」と答えた。
また、井上靖が静岡県・沼津の高校の先輩であること、高校時代よりも、年齢を重ねてからのほうが、故郷について、また同郷の井上靖に惹かれるようになったと続けた。
さらに、実際に井上靖氏の家を使用して撮影したことを明かした。「撮影前に井上家の全面協力を得ることができたのです。この映画は、家が重要となることが分かっていたので、2011年の5月に取り壊されるまでに撮影が終わるようにスケジュールを組みました」と答え、小津安二郎監督がこだわった縦の構図を美しく表現するように意識して撮影した、と続けた。
最後に、この映画の母親像を聞かれた監督は、「普遍的な母親像を描いているつもりです。でも今ではそれらは失われたものが多いと思います」と答えた。
映画『わが母の記』は、2011年公開予定