小栗旬、役所広司の印象は普通のおじさん!? 日本映画唯一のコンペ出品作品『キツツキと雨』好発進!
第24回東京国際映画祭
23日、六本木ヒルズをメイン会場に開催中の第24回東京国際映画祭コンペティション部門に出品された映画『キツツキと雨』舞台あいさつ、および記者会見が行われ、本作に出演する役所広司と小栗旬、そして沖田修一監督が出席、ユーモラスなやりとりに、会場は笑いに包まれた。
第24回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品作の中で唯一の日本作品となる本作は、役所演じる木こりと小栗演じる気弱な映画監督の出会いと奇跡をユーモアたっぷりに描いた作品。満員の客席を前にした3人は感無量な表情だった。今回、役所と初共演を果たした小栗は「役所さんは子供のころからいろんな映画に出ている方だったので、どんな人なんだろうと興味がありましたけども、良い意味で普通のおじさんでした」とコメント。それを受けた通訳が早速そのコメントを英訳したわけだが、それを聞いた役所が「先ほど、おじさんの部分をold manと訳していたみたいですけど、正しく海外の人に伝わってるのか心配です」とボヤいてみせて、会場は笑いに包まれた。
続けて小栗が「ちなみに監督はあまりにも緊張したために、舞台あいさつで着るための上着を電車に置いてきちゃったんです」と暴露すると、役所も「今日のために新しく買ったやつなんですよ」と付け加える。すると沖田監督が照れくさそうに「さっきこのジャケットを六本木ヒルズで買ってきました」と明かすと会場は大爆笑。小栗も「そんなすてきな監督が作っているので、この映画は温かい雰囲気に包まれているんです」と笑顔でコメントした。沖田監督のデビュー作『南極料理人』は、とぼけたユーモアが全編を包み込み、観た後に温かい気持ちにさせてくれる佳作だったが、沖田監督の人柄がその作風に反映されていることがうかがい知れるやりとりだった。そしてもちろん本作でもそのユーモアセンスは健在である。
そんな沖田監督のユーモアセンスについて聞かれた役所は「これだけ面白い台本を俳優が演じたときに、それよりも面白くなくなったらどうしようという不安がありました。演じるときは、演じた人物がユーモラスなことをしゃべったり、行動するのではなく、生きている中で、理由があって行動しているのだろうと。それが監督のユーモアだろうなと思いながら演じていました」と述懐すると、小栗も「沖田監督は、特に何が駄目というわけではないですが、もう一回いいですかと言うときがあったんです。そのときは役所さんと、何か微妙なズレがあるんだろうね、どうしたら、監督が良いというところにいくんだろうと話し合っていました。ぼくたちは何を変えるわけでもなく、さっきとは何かが違ったんだろうなということを日々体験していくという感じでしたね」と付け加える。そこで沖田監督にNGを出した理由を聞いてみると、「自分でも分からないんです」と笑いながらも、「分からないということが分かるというか。多分、何かそのときの、空気というものが違ったりするのかもしれないですね。もう一回やったら良くなるかもしれないとふと思って、理由がないけどもう一回やっていいですかと聞いてみるんです」とその演出方法(?)を明かす。劇中では、その「沖田ワールド」ともいえる不思議な空間が支配しており、なぜかクスクスしてしまう。役所も「ほんわかと温まる、未来に向かって前向きになれる作品だと思います。そこを評価してもらって、コンペ部門に出させてもらったのかなと思います」と自負する通り、30日のグランプリ発表に向けて、どのような結果が飛び出すか。今から楽しみだ。(取材・文:壬生智裕)
第24回東京国際映画祭は10月30日まで六本木ヒルズをメイン会場に都内の各劇場などで開催中