アメリカ政府に裏切られた美人過ぎる元スパイ、主婦とエージェント業の両立を語る!
イラクに大量破壊兵器はないと元外交官の夫が公表したことで、アメリカ政府から報復を受けることになった元CIAの女性の実話を描く映画『フェア・ゲーム』から、モデルとなったヴァレリー・プレイム本人が、CIA要員だったころの仕事と家庭との両立、そして当時の思いを語った。
2003年、現地に核開発計画がないと報告したにもかかわらず、ブッシュ政権はイラクに宣戦布告、調査を手掛けた元外交官ジョセフ・ウィルソンは新聞に政府の情報操作の実態を明かした。そして政府は報復としてCIAでスパイ活動を行っていた彼の妻ヴァレリーの素性を暴露、彼女のチームだけでなく家族までも危険にさらされた。本作は、このアメリカ政府の一大スキャンダル「プレイム事件」を、『ボーン・アイデンティティー』のダグ・リーマン監督が、ナオミ・ワッツとショーン・ペンを主演に迎え映画化した作品だ。
CIAエージェントとしての毎日を「自分の仕事が大好きで、とても面白い仕事でした」と振り返るヴァレリー。子を持つ母であり、妻であることと、責任ある仕事の両立はかなり大変だったそうだが、「仕事をあきらめることはできませんでした。夫の理解があり、サポートをしてくれたので助かりました」と長年大使として働き、彼女の仕事に理解があった夫の存在が、両立には不可欠だったと語った。映画にも登場する彼女の両親が近くに住んでいたので、出張へ行くときは、子どもたちの世話をしてもらえたことも大きかったようだ。
母国政府から裏切られた影響は、当然私生活にも及び、当時は結婚生活も危機を迎えたというヴァレリーだが、「わたしたちは一目ぼれで恋に落ちたので、映画でも描いていましたが愛のおかげで結婚生活の困難な時期を乗り越えたのです」とのこと。メディアから好き勝手に報道され、自宅に脅迫電話がかかってくる生活を強いられたことも、「第三者に自分たちの結婚生活を台無しにさせたくないと思いました。わたしたちは心から愛し合っていましたから」と結婚を守る意志を強める一因になったと語った。
ヴァレリーの身分をリークしたとして、ディック・チェイニー副大統領の首席補佐官だったルイス・リビーが起訴され、有罪判決が下りた後、彼女は議会での証言を求められた。好き放題の記事を書くメディアへの対抗、「自分の口から真実を語りたいという欲求」からそれを引き受たヴァレリーは、それをきっかけに公の場で事件について語るようになったのだという。
今回の映画についても、最初は乗り気ではなかったそうだが、今は本作を通し「政府が民主主義を保持することがいかに大事か」を人々に知ってもらいたいという。ヴァレリーは、「主人はニューヨーク・タイムズへの投稿でそれ(民主主義)を実行しました」と言い、「日本人は原発問題で政府による情報の開示が不足していたことにショックを受けたと思いますが、この問題も同じなのです。市民は政府に民主主義を保持させる立場にあるのです」と日本国民も、民主主義の意味について考えてもらいたいという思いを明かしている。
現在もCIAの仕事に未練はあるというヴァレリーだが、今はメキシコのサンタフェの地で大学の講演などを行い、子どもの学校での活動にも参加するなど、幸せな生活を取り戻しているようだ。また、スパイ・スリラーの連載も執筆中で、来年が発売されるとのことなので、近いうち彼女原作のスパイ映画が作られる日が来るかもしれない。(編集部・入倉功一)
映画『フェア・ゲーム』は10月29日よりTOHOシネマズ 六本木ヒルズ ほか全国公開