三谷幸喜監督と西田敏行、被災地・宮城で最新作を公開前に特別上映!亡くなった夫をすぐそばに感じたと感想をもらす人も
25日、現在開催中の第24回東京国際映画祭による被災地復興支援プロジェクト「TIFF ARIGATO プロジェクト」の一環として、「東京国際映画祭 IN 仙台」特別上映会が仙台MOVIXにて行われ、映画『ステキな金縛り』舞台あいさつに、西田敏行と三谷幸喜監督が登壇し、東北に笑いのエールを届けた。
本作は、失敗続きで人生の窮地に追い込まれた弁護士の宝生エミが、殺人事件のアリバイ立証のため、唯一の証人である”落ち武者の幽霊・更科六兵衛”を法廷に立たせる! という騒動を描いたコメディ。落ち武者を演じる西田とエミ役の深津絵里が作り出す絶妙の間と、次々に現れる豪華なゲスト陣の強烈な登場シーンに、子どもからお年寄りまで幅広い年齢層が集まった満員の客席からは、弾けるような笑い声が沸き起こった。
上映後、観客の大きな拍手に迎えられて登場した西田は、「この映画を観て、大いに笑って口角を上げて、エネルギーを高めて明日からの復興への一助にしていただければ、本当にうれしいです」とあいさつ。この日、観客とともに映画を鑑賞していた三谷監督は、「ご年配の方もたくさんいらして、幅広い年齢層の方たちに楽しんでいただけたことがとてもうれしいです。老若男女に笑ってもらう映画を作るのはとっても難しいこと。だから僕は映画を作るとき、自分がおもしろい、と思ったものを作るだけなんです。だから、それを皆さんにわかってもらえるか、上映前はとても不安なんです。でも今日、これだけたくさんの方々に笑っていただけたのを見て、すごくほっとしました。観客の笑い声が入って、ようやく映画が完成するということを実感しました」と笑い声の絶えなかった観客の反応に感激もひとしおの様子だった。
東日本大震災による死者数は、宮城県が最も多く、10月現在、県内での死者は9,495名、行方不明者は2,026名にのぼる。復興は進んでも、心の傷は簡単には癒えず、大切な人の死を受け入れられずに苦しむ人は多い。だが、この日の上映後、日常にさりげなく入り込んでいる、ユーモラスな幽霊・六兵衛の姿に気持ちが救われたという人がいた。夫に先立たれたという年配の女性は、「映画を見終わって、六兵衛のように、旦那がどこかで見守ってくれている気がしました」と本作の感想を話し、震災で友人が亡くなったという20代の女性は、「大切な人が亡くなってしまったのは本当に悲しいけれど、この映画を観ていたら、本当は近くにいるんじゃないかなって。そう考えたら、少し楽になれました」と笑顔を見せた。死後の世界があるかないか、幽霊がいるかいないか、そんな難しいことではなく、「そうだったらいいな」と想う気持ちが大切なのかもしれない。幽霊を演じた西田は、「この映画に出演してから、亡くなった両親が、すぐ近くで見てくれているような気持ちになるんです。部屋を暗くして、目を凝らしたら親父がいるんじゃないかって思うようになったんです。こういう思いは、いま、とても大切だな、と感じています」と語った。
人の心を癒し、勇気づける、日本の未来に夢や希望を持てる機会を提供することを目標に掲げ、「信じよう。映画の力」を合言葉に開催されている本年度の東京国際映画祭。東日本大震災復興支援として、「TIFF ARIGATOプロジェクト」を展開し、被災地での映画無料上映を行う「シネマエール東北」や、チャリティーを目的とした「TIFF ARIGATO募金」、被災地発の映画・映像作品を上映する「特別上映『震災を越えて』」などを実施。3月の東日本大震災で甚大な被害を受けた被災地を勇気づけるために開催された「東京国際映画祭 in 仙台」で、“一番笑えて泣ける感動作品”として、350本以上の出品作から選ばれたのが本作だった。「亡くなった方たちが、ただ、いなくなってしまったのではなく、本当はすぐ近くにいる、そんなことを感じられるような作品にしたかった」という三谷監督の思いが込められた映画『ステキな金縛り』は、コメディ映画としてのパワーを存分に発揮し、東北に、笑いと感動、そして明るい希望の光を届けた。(編集部:森田真帆)