原田芳雄さん主演、福島原発でゲリラ撮影も!70年代に原子力問題に挑んだ、田原総一朗原作ATG映画がDVD化!
ジャーナリスト田原総一朗のドキュメンタリーノベルを原作に、原田芳雄さんを主演に迎えた1978年の映画『原子力戦争 Lost Love』のDVDが、12月7日に発売される。福島でロケを行い、福島原発でゲリラ撮影を敢行した場面も登場するなど、1970年代の時点で原子力問題に真っ向から挑んだ、ATG幻の傑作だ。
本作は東北のとある港町を舞台に、消えた恋人を追う青年ヤクザの前に立ちはだかる権力の影を描いた社会派サスペンス。今年7月に惜しまれつつ亡くなった原田芳雄さんが、消えた恋人を追ううち、町の原発に絡んだ、黒いわなに巻き込まれる主人公を熱演。福島でロケを行い、福島原発でゲリラ撮影も敢行。その映像は、主人公が原発敷地内に侵入しようとしてトラブルになるシーンで使用されている。スリーマイル島原子力発電所を扱った、1979年の映画『チャイナ・シンドローム』よりも前に製作されていたことも驚きだ。
原作となった「原子力戦争」は、田原氏が自ら重ねた取材をもとに、30年前以上前に出版されたドキュメントノベルで、今年の原発事故後に復刊された。原子力船「むつ」の放射線漏れ事件を背景として、安全よりも巨大利権が優先される過程を鋭く追及した内容は、現在でも電力会社や政府の姿勢がまったく変わっていないことを表していると、評判を呼んでいる。
映画は世界的なファッションモデルとして活躍した山口小夜子さんの映画初主演作であり、風吹ジュンも出演する。メガホンを取ったのは1974年の『竜馬暗殺』でも原田さんを主演に起用した黒木和雄監督。日本映画史に多大な影響を与えた映画会社ATG(日本アート・シアター・ギルド)幻の傑作としてDVD化は絶望視されていた。原発事故から30年以上前から原子力問題に立ち向かう作品、さらに当時の福島原発の様子をうかがう作品としても、貴重なDVD化といえる。
また本作と同時に、1971年の映画で、田原唯一の監督作品である『あらかじめ失われた恋人たちよ』もDVD発売。桃井かおりが本格的な映画デビューを飾り、初ヌードを披露した作品としても知られ、第35回湯布院映画祭でも上映された。「現代は饒舌(じょうぜつ)の時代だが、背後にあるやりきれない魂の空白を描く」という意図で製作されたといい、こちらも製作から40年近くたった現在に通じるメッセージが描かれた作品といえるだろう。両作品共に特典として、田原氏の最新インタビューが収録されているのにも注目だ。(編集部・入倉功一)
映画『原子力戦争 Lost Love』、『あらかじめ失われた恋人たちよ』DVDはキングレコードより12月7日発売 価格:各4,179円(税込み)