孤独な爆弾テロ犯を演じ新境地の瑛太、出演のきっかけは「オレを出せ」という直電交渉!!盟友・豊田利晃監督が明かす
23日、現在開催中の第12回東京フィルメックスで特別招待作品『モンスターズクラブ』上映後に豊田利晃監督によるティーチインが行われ、本作で孤独な爆弾テロ犯を演じ、新境地を見せた瑛太がこの役をつかんだのは監督への直接交渉だったことが明かされた。
本作は、豊田監督にとっては、監督3作目の『青い春』、6作目の『蘇りの血』に続く東京フィルメックスでの上映作品。豊田監督自身、「映画に対して誠実な映画祭」と評するだけに本映画祭での上映が感無量な様子。「今年の2月の末に東北の山形で撮影していたんですが、撮影中に主役の瑛太のお父さんが亡くなったり、そのあとにも震災があったりと、僕にとっても瑛太にとっても特別な作品。ぜひ今年中に観てもらいたいと思っていました」とコメントすると、「瑛太も、窪塚(洋介)くんもみんな映画祭に来たがっていたんですが、ドラマの撮影中だとのことなので勘弁してください」と会場に呼びかけた。
瑛太が孤独な爆弾テロ犯を演じ、新境地を見せている本作。「もともと短編を作っていたんですが、それを聞きつけた瑛太からオレを出せという電話が直接かかってきて」と瑛太が出演した理由を明かす豊田監督。2002年公開の瑛太の映画デビュー作『青い春』からおよそ9年。『ナイン・ソウルズ』『空中庭園』と長い付き合いを重ねてきた二人だけあって、今回、4度目のタッグにも気心が知れた様子。本作には、瑛太が真冬の小屋の中で、水浴びをするために尻が丸出しとなる全裸シーンがあるが、「あれ、実はもっと長い時間だったんですよ。股間を出しながらよくやるなと思いました」と冗談交じりにちゃかす監督。しかし、それはつまり、二人の信頼関係が強く結ばれていたからこそのコメントであろう。
本作の舞台は見渡す限りの雪原の真っ白な世界。人里離れ、社会と隔離された山奥でたった一人で生き、あらゆる機関や企業などに爆弾を送りつける良一(瑛太)の物語が展開される。本作は山小屋で隠遁生活を送りながらも小包爆弾を送り続け、18年間もの間、全米を震撼させたという天才数学者セオドア・ジョン・カジンスキー(別名:ユナボマー)にインスパイアされた物語だという。「この映画を作ろうと思ったとき、一回東京を離れて山に住んでいたことがあって。ユナボマーの話は皆さんにもぜひ調べてもらいたいんですが、彼の家族の話が面白かったんですよ」とインスピレーションの源を語るが、「でも爆弾や小屋に住むという以外は(映画的には)直接的なつながりはないですね。でも(現在も終身刑として服役中である)ユナボマーには観てもらいたいですね」と本作に自信を見せる豊田監督。もちろんトレードマークであるスローモーション、音楽とマッチした映像、そして流血シーンなどは本作でも健在である。
前作の『蘇りの血』では森が、そして今回は山奥の雪原が舞台となった豊田監督。「ほかの場所で撮影したいとは思わないか」と聞かれると「実はもう次回作を沖縄で撮影しました。でも(関係者から)具体的なことは言うなと言われているんですが、来年秋の公開を予定しています」と早くも次回作の用意があることが明かされた。さらに『蘇りの血』の主演を務めた中村達也と組んだユニットTWIN TAILの活動についても「みんな別々の作業をしているので、なかなか活動ができないですが、中村さんとはまた何かをしたいと思っています」と中村との新たなるコラボを示唆するなど、精力的に活動しているようだ。(取材・文:壬生智裕)
映画『モンスターズクラブ』は2012年GW、ユーロスペースほかにて公開予定
第12回東京フィルメックスは11月27日まで有楽町朝日ホールをメイン会場に開催中