堺×香川はガチンコ演技バトル!広末涼子はクールな演技で新境地!内田けんじ監督3年ぶり新作『鍵泥棒のメソッド』
俳優・堺雅人×香川照之×広末涼子の豪華共演で話題の映画『鍵泥棒のメソッド』がこのほど、クランクアップした。同作品は、大泉洋主演『アフタースクール』が好評だった内田けんじ監督の3年ぶりの新作としても注目が集まっているが、撮影を終えた内田監督は「(脚本執筆で)引きこもっていた期間が長かったので、こんなに僕の映画を理解してくれていた人がたくさんいたとは。それがうれしかったですね」と喜びを噛み締めていた。
内田監督といえば物語がどこに転ぶか分からないオリジナル脚本に定評があるが、今回もファンの期待を裏切らない。俳優になる夢に挫折し、35歳にして無職の男・桜井(堺)が自殺しようと考えていた目の前で、羽振りの良さそうな男・コンドウ(香川)が転倒事故を起こして記憶喪失に。桜井はこれ幸いにとコンドウに成り代わるも、コンドウが裏稼業を営んでいたことからヤクザ絡みのトラブルに巻き込まれてしまう。その2人に、ある理由でどーしても結婚したい女・香苗(広末)も加わって、本人たちは必至だが端から見れば笑わずにはいられない人間ドラマが展開する。
本作のアイデアについて、内田監督は「『アフタースクール』でどんでん返しに次ぐどんでん返しという映画のルールぎりぎりのところまでやったので、今回はシンプルに起承転結の物語を作りたいと思いました。記憶喪失という常套手段を使ってどこまで面白く出来るか? エンタメむき出しのパラレルワールドを目指してます」と説明する。
中でも、昨今の映画賞を総ナメにしている堺と香川の、ガチンコ演技が気になるところだ。二人は現在放送中のTBS系ドラマ「南極大陸」(毎日曜・後9時)に引き続きの共演と、互いの手の内は熟知している。それだけに堺は「脚本を読んでぜひやりたいと承諾したけど、その後にコンドウ役が香川さんに決まって、『やめときゃ良かった。演技合戦と見られると損だなぁ』と。香川さんと立ち会って、まともに勝つ人は今の日本にはいませんから。ちょっと後悔しています」と苦笑い。一方、香川は「ライバル意識? ない、ない! 堺さんと入れ替わるなんて有難いですよ」と恐縮しきり。実は物語の設定上二人が同じ衣装を共有しており、香川の汗とにおいが付いた脱ぎたてホカホカTシャツを堺が着用することもある“クサイ間柄”とあって、良い感じでお互いに触発し合ったようだ。
幸運にも、演技派二人の熱演を間近で見ている広末は「わたし自身はエリートで支配的な役の堺さんより、おどおどした感じの役が好きなので、今回そういう姿を見られたのが楽しかった。一方、香川さんは熱いお芝居が好きで、後半はそういう雰囲気のお芝居だったんです。その二人がバトルしているところを見られて楽しかった」と笑顔で振り返った。
その広末といえば現在放送中のテレビ朝日系ドラマ「11人もいる」(毎金曜・後11時15分)で元ストリッパーの幽霊という、宮藤官九郎ドラマらしい意外な役でお茶の間の話題となっているが、本作でもチャームポイントの笑顔を封印し、堅物キャリアウーマン役で新境地に挑んでいる。広末との共演シーンが多かった香川は「広末さんを見ている限り、新しい広末さんが生まれようとしていた。この映画は広末さんにとって歴史の節目になると思う。それと同じ事が出演者全員に起こっているとするなら、僕自身も堺さんも、新しい俳優としての像が形成されていくのではないか?と思ってます」と内田監督の演出を絶賛した。(取材・文:中山治美)
果たして内田マジックにかかった3人がスクリーンでどんな化学反応を起こしているのか? 完成が楽しみだ。
映画『鍵泥棒のメソッド』は2012年秋公開。