アカデミー賞への指針となるニューヨーク批評家協会賞発表!受賞作品の『ジ・アーティスト』ってどんな映画?
第84回アカデミー賞
いよいよアカデミー賞レースに向けての火ぶたが切られた。というのも、アカデミー賞候補作品の指針になるともいわれているニューヨーク批評家協会賞の受賞作品、受賞者が今週発表されたからである。
ニューヨーク批評家協会賞は、各種批評家協会賞の中で最も古く1935年よりスタートしている。ほかの映画賞と比べて娯楽性よりも芸術性や社会性を持った作品を選ぶ傾向にあることから、メジャー路線を行く関係者の一部からは「オタクで賞」などと陰口をたたかれており、ある意味では昔気質の硬派な映画賞といってもいいかもしれない。だがここで着目すべきは、ニューヨーク批評家協会賞を受賞をするとアカデミー賞候補に上るのはほぼ確実、アカデミー最高の栄誉である作品賞の受賞確率は約50パーセント弱と言われている。
今年のニューヨーク批評家協会賞の作品賞を受賞したのは『ジ・アーティスト(原題)/ The Artist』という映画。日本ではまだ聞き覚えのない映画が映画業界でどれだけ大胆な存在かをざっとご紹介しよう。
近代の映画製作において映画スタジオが一番嫌がるタイプの映画に、字幕付であること、白黒作品であること、というのがある。まず字幕は、登場人物の言っていることが直接わからず字幕を読むのも面倒くさい、白黒に関してはカラーに慣れ親しんでいる現代の映画ファンに白黒映画は退屈だという理由からで、すなわち興行的にリスキーであるという判断からである。
映画の登場人物がセリフをしゃべるのが当たり前になっているこの時代に、字幕どころか、登場人物のセリフがまったく聞こえない映画だったら一体どうなるのだろうか? それにあえてチャレンジしたのがこの『ジ・アーティスト』という作品である。全編を通して白黒なおかつサイレントというかなり大胆な試みの作品なのだ。
それだけでなく、スクリーンからかもし出されるサイレント映画時代の雰囲気が絶妙に甘く切なく、見ているものをどんどんひき込んで行く、と大評判である。映画のあらすじは、サイレンス映画の時代から、トーキーへと目まぐるしく移り変わって行く映画業界の中で、栄華衰退してゆくサイレント男優と女優のロマンス描いたもの。フランスのミシェル・アザナヴィシウス監督がメガホンをとっており、ニューヨーク批評家協会賞では同作品で監督賞を受賞した。
公開前からすでに大評判の『ジ・アーティスト(原題)/ The Artist』。これから各映画賞レースでどこまで食い込み、それがどこまでアカデミー賞につながっていくか。眼が離せない作品となりそうである。(文・ロス取材: 明美・トスト/Akemi Tosto)