細川茂樹、新妻と二人三脚で挑んだ新作映画『カルテット!』制作秘話を明かす
気持ちが離れ離れになった一家がカルテットを結成し、家族として再生していく姿を描いた映画『カルテット!』で、ピアノとチェロの演奏を、それぞれ披露した鶴田真由と細川茂樹が、その驚きの習得法を明かした。
本作の見どころの一つは、キャストが実際に楽器を演奏しているところ。チェロを担当した母親役の鶴田は、ピアノは習っていたが弦楽器の演奏は、初めて。家に教師を招いてマン・ツー・マンで猛特訓し、ひと月で5曲もマスター。鶴田は、その苦労を「弦楽器は触るのも初めてで、構えるところから弾けるようになるまで、かなり時間がかかりました。それに手のアップで顔も映るので、吹き替えがきかないんです。それはバイオリンを弾く息子役の高杉真宙くんも同じ条件。出来上がった映像を見て、『大変な日々を思い出すね』とお互いの健闘をたたえ合いました」と振り返った。
一方、父親役の細川は、ピアノ経験者。さぞかし楽勝だったかと思えば、さにあらず。子どものころ以来弾いてなかったという細川は、途中で投げ出したくなるほど苦労したとか。その彼を何とかピアノに向かわせたのが今年2月に入籍したばかりの夫人である。「奥さんがピアノ、うまいんです。なので、毎晩、お風呂に入って、こっそり寝ようかなと思っていると、『練習、やった?』って怒られて(苦笑)。毎晩毎晩、彼女が練習に付き添ってくれるうち、嫌々だったものが少しは形になり、弾けなかったものも弾けるようになって……。そうやって、ちょっとずつ次の段階に上がって、今度は楽しくなってきたんですよ。この映画みたいに、息子と娘が楽器をやって、奥さんと一緒に演奏できたら、すてきですよね。僕も、ブレーメンの音楽隊ぐらいだったら、できるかな(笑)」と新妻との二人三脚の練習から、子どもが誕生してからの将来の展望までを語った。
また本作では、楽器演奏のほかに、ロケでも苦労があった。本作の舞台は千葉県浦安市。クランクイン直前に発生した東日本大震災により市域の86%が液状化の被害を受け、一時は制作も危ぶまれた。「本当に大変でした。映っていないですけど、周囲の家は傾いたり、塀も壊れていたり。風塵(ふうじん)もすごくて、合間合間にマスクをしての撮影でした。とても映画を撮るような状況ではありませんでした」(細川)。それでも被災者の方、700人以上がエキストラとして、この作品に参加した。「撮影していていいのかなと思うこともありました。でも『エキストラに参加して、すごく楽しかった』というメールをいただいて、わたしたちにできることってこういうことなのかもと思い直したんです」(鶴田)。家族のきずなと再生を描いた物語が復興の後押しになればとスタッフ、キャストが一丸となって完成させた本作。「まずは浦安の人に観せたい」という細川の願い通り、12月17日、浦安で先行上映される。(取材・文:高山亜紀)
映画『カルテット!』は12月17日よりシネマイクスピアリにて先行公開の後、2012年1月7日全国公開