リーアム・ニーソンが氷点下10度以下の極寒地で撮った新作『ザ・グレイ』の日本人撮影監督を絶賛
映画『シンドラーのリスト』や『96時間』などでおなじみの北アイルランド出身の俳優リーアム・ニーソンが、新作『ザ・グレイ(原題) / The Grey』についてジョー・カーナハン監督とともに語った。
同作は、アラスカの原油採堀工場で働くオットウェイ(リアム・ニーソン)は、ある日彼と仲間を乗せた飛行機が墜落して極寒の雪原に投げ出された。運良く助かったオットウェイと他の生存者たちは、狼などの野生の脅威にさらされながら、安全な場所へと歩き始めていくが、そこには過酷な自然が待ち受けていたというアクション・スリラー作品。映画『NARC ナーク』や『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』を手掛けたジョー・カーナハン監督がメガホンを取っている。
映画は、自然と人間との戦いが描かれている。「この映画の準備をするためにハーマン・メルヴィルの『白鯨』を読み返したんだ。さらに、ジャック・ロンドンの作品やアーネスト・ヘミングウェイ作品も読んだよ。この映画のジョー・カーナハン監督は、まるでジョン・ヒューストン監督やジョン・フォード監督のような男くさい作品を作るから、その準備が必要だったんだ……」とリーアムが語る通り、主人公オットウェイの回想シーンに登場する妻以外は、女性が全く出てこない男だらけの映画になっている。
マイナス10度以下という極寒の状況下で「(寒過ぎて)演技する必要がなかった……。撮影はカナダのブリティッシュ・コロンビア州にある山岳で行われ、そこまではスノウキャット(雪上を自由に動ける車)で撮影現場まで向かい、その途中で僕は台詞を読み返していたが、実際に現場に着くと寒過ぎて、すべてを忘れてしまうんだ。だからむしろ演技よりも、撮影中はどの方向に向かって、どのようにその台詞を話すかだけに集中することにして、演技はむしろ気にしていなかったくらいだ」と語ったリーアムは、撮影中は防寒下着の上に4枚の服を重ね着していても寒かったそうだ。
撮影中の苦労について「プロダクションデザイナーのジョン・ウィレットが過去にブリティッシュ・コロンビア州にある山岳で撮影した経験があったために、彼のおかげで映画内で墜落した飛行機737の部品を撮影現場の山岳まで運ぶことができたんだ。ただ最も大変だったのは、毎日をスノウキャットを使ってスタッフ全員が一時間離れた山の上にあるセットに移動して撮影するが、次の日同じ撮影現場に向かうとすべてが雪に覆われ、その雪を取り除く作業から始めなければいけなかった。だから肉体的な作業が本当に大変だったよ……。ただ、そんな過酷な自然の中での撮影に、日本人撮影監督タカヤナギ・マサノブは、自分でカメラオペレイターをしながら、全く照明のない中で、印象に残る映像を撮ってくれた!」と良いスタッフに囲まれながら撮影できたことをジョー・カーナハン監督が語った。
映画は、狼の群れとの戦いや人間の体力の限界を超えた精神的な挑戦が魅力的な作品で、さらに襲いかかる自然の脅威を映像で実感させてくれる映画に仕上がっている。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)