父親にゲイであることをカミングアウトされた実体験をもとに映画化した『人生はビギナーズ』、マイク・ミルズ監督を直撃!
映画『サムサッカー』で脚本兼監督を務め、一躍注目を浴びたインディーズ系の監督マイク・ミルズが、ユアン・マクレガー主演の新作『人生はビギナーズ』について語った。
同作は、長年連れ添った妻に先立たれた75歳の夫ハル(クリストファー・プラマー)は、ある日突如息子オリヴァー(ユアン・マクレガー)に自分がゲイであることをカミングアウトする。一方、その息子オリヴァーも恋愛には奥手でなかなか恋することができなかったが、仲間から呼び出されたパーティーで運命的に女性アナ(メラニー・ロラン)と出会ったことで、自分の殻を破って新たな幸せをつかんでいくというドラマ作品。この映画で、クリストファー・プラマーがアカデミー賞助演男優賞にノミネートされている。
なんとマイク・ミルズ監督は、実の父親にゲイであることをカミングアウトされたそうだ。「僕の父親が病気で亡くなる前に、彼と素晴らしい内容の真剣な会話をしていたときがあって、そのときに突如ゲイであることを言われたんだ……。もちろん、個人的なストーリーではあるけれど、そのときはすでに母親を亡くしていたために、これで両親を失うことになるので、自分にはそれを受け止めて、さらに(何らかの手段で)プロセスする必要があったんだ。ただ、そのプロセスだけをするなら、映画までは制作していなかった。だが、この父親のカミングアウトには、人として深い意味合いを持つと思い、そんな彼の話を映画という手段で多くの人々に伝達したいと思ったことが始まりだった。だから決して、僕のナルシスト的な見解や自己嫌悪を描いたものではなく、父親の偉大な精神を称賛したものであるんだ」と父親の告白に心を動かされたようだ。
クリストファー・プラマーのキャスティングについて「個人的には僕の監督としての魅力と言いたいところだが、単にクリストファーは脚本を気に入ってくれたんだ。彼が演じたこのハルという役が、彼にとって良かっただけなんだよ。実際に僕は、彼に(出演依頼するための)手紙を書いたんだ。なぜなら、監督はある意味パーティーのホストみたいなもので、できるだけ来客(俳優やスタッフ)に好意的でなければいけないと思っているからね。ただ、彼の場合は仕事が好きで、常に仕事にハングリーなんだ。あの年齢(82歳)になっても休むことを知らないからすごいよ!」と彼の活力に感嘆した。そして、その見事な演技がクリストファーにアカデミー賞助演男優賞ノミネートをもたらした。
同性結婚について「いまだに我々は何をしているんだと思うし、同性結婚を認めるべきだと思う。同性も平等であるべきだ。同性である場合、パートナーの緊急入院の際に、これまでは家族や配偶者だけが許されていた患者の訪問を、ようやく去年、性別や宗教、そして人種に関係なくできることになったが、それまでは長年連れ添ったパートナーでも州によっては訪問することさえできなかったなんて考えられないことがあった。だから、僕らはなぜいまだに多くの州で同性結婚が認められないかを、しっかり考えなければいけないと思う」と述べた。彼の言葉は個人的な見解ではなく、人々の声のように思えた。
映画は人はどんな年齢になろうと、人生を謳歌できることを描き、さらに自分に素直に生きることを学ばせてくれるような作品に仕上がっている。(取材・文・細木信宏Nobuhiro Hosoki)