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アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門ノミネート!両親が犯罪歴を持つ高校生たちが、アメフトで奇跡を巻き起こす『アンディフィーテッド』

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(左から)T・J・マーティン監督、ダニエル・リンジー監督
(左から)T・J・マーティン監督、ダニエル・リンジー監督

 今年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にノミネートされた話題の作品『アンディフィーテッド(原題) / Undefeated』について、共同監督のダニエル・リンジーとT・J・マーティンが語った。

 同作は、テネシー州メンフィスで負けてばかりの黒人高校生アメフトチーム、「マナサス・タイガース」は、ある日白人のコーチ、ビル・コートニーを得てから、チームの状況が変化し始め、後に選手たちの人生を変えていくという奇跡的なドキュメンタリー作品。アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門では、映画『パラダイス・ロスト3:パーガトリー(原題) / Paradise Lost 3 : Purgatory』に次ぐ、ダークホース的な存在として評価されている。

 白人のコーチ、ビル・コートニーについて「まず最初に、ビルが黒人の高校生プレイヤー達に指導していた際に、これまでのコーチとは違う印象を受けたんだ。プレイヤーの多くは父親のいない家庭に育ち、彼がプレイヤーたちの父親的な存在になっていく。ビル自身も、彼が4歳のときに父親が出ていってしまった経験を持っているんだ。この彼の過去が、このチームをコーチしていく上で、大きな意味合いを持ってくることになるんだ」とダニエル監督は話し、さらにビル・コートニーは6年間もこのチームをコーチしていたことも教えてくれた。

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 映画内では、試合中にケガをしてしまうモンテレール・“マネー”・ブラウン、短気でチームに影響を与えてしまうチェイヴィス・ダニエル、そして体の大きいスタープレイヤーのO・C・ブラウンを中心に描かれていくが、彼ら以外にも焦点を置こうと思っていた選手はいたのか。「撮影当初は、“マネー”とO・Cを中心に描いていこうと思ったが、撮影途中でチームに影響を与えているチェイヴィスを外せないと思ったんだ。ただ、残念だったのは編集でホアキン・コリンズ選手を外さなければいけなかったことだ。彼は、4年間で16~17件ものフォスターズ・ホーム(子どもを育てられない家庭に対して一時的に提供される養育家庭)でたらい回しにされていて、18歳になったらフォスターズ・システムが有効せず、ホームレスになってしまったんだ……。すごく感傷的なものだが、映画のストーリーとしてテンポを遅らせてしまうため、省くしかなかったんだ……」と彼を含められなかったことをダニエル監督は悔やんでいたが、このまとまった編集が見事にアカデミー賞のノミネーションを勝ち取ることになる。

 ほぼ選手全員の両親が犯罪歴があることについて「このメンフィスの北部は、アメリカで最も犯罪の多い地域としてフォーブス誌で取り上げられたことがあるほど、暴力的な場所なんだ。実はこの映画を撮影する際に、青春時代のスポーツ作品を描く以外に、学校の教育にも触れようと思っていたんだ。犯罪は教育システムの欠落から起きているからね。だから、この映画では選手たちの教育を通して、より印象深い選手の個性が観られるんだ。それが、(観賞後に)観客の間で教育について会話するきっかけになればよいと思っているんだ」とT・J・マーティン監督が語った通り、選手たちは家庭環境の逆境を乗り越え、力強く成長していく。

 映画はアメフトに全く興味のない人でも、ビル・コートニーコーチの熱意と選手の集中力に引き込まれていく至極のドキュメンタリー作品に仕上がっている。最後に二人はアカデミー賞にノミネートされたことには興奮しているが、自分たちの映画のアプローチの仕方は変わらないと思うとの言葉を残した。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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