スピルバーグは破壊神!? B級映画の帝王コーマンと同時リスペクトする映画秘宝がスゴい
娯楽映画に多大な影響を与えた2大巨匠関連作『戦火の馬』と『コーマン帝国』の公開を受け、通巻150号を迎えた映画専門誌「映画秘宝」4月号では、スティーヴン・スピルバーグとロジャー・コーマンを徹底特集、両者への多大なリスペクトをささげている。
『戦火の馬』が児童小説原作の作品なだけに、最近は感動もののヒューマンドラマを描くイメージが取り上げられているスピルバーグ。映画秘宝では、その巨匠を「夢追い人の皮をかぶった破壊神」と呼び、「スピルバーグの本流」として、子どもようなイマジネーションと巨匠の技巧によって生み出される、活劇、SFX、そして残酷描写など、異常ともいえる巨匠のセンスを徹底的に読み解く。
本人のインタビューはもちろん、デビュー作から近年まで、石上三登志氏がその映画史を語る「私家版 スピルバーグ映画史」ほか、中原昌也、高橋ヨシキらライター陣によるコラムは圧巻のボリューム。「スピルバーグ悪趣味劇場」として、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』の人間の生皮をつるしたセットや猿の脳ミソシャーベットなど、巨匠のアブない一面が垣間見える部分を、小さくもしっかり紹介しているのがユニークだ。
B級映画の帝王コーマンの特集も、スピルバーグと同等のボリューム。「早い、安い、儲かる!」な姿勢で多くの作品を生み出し、ジャック・ニコルソン、マーティン・スコセッシらを輩出するなど、映画史に残るその功績をたたえている。こちらも大内稔氏による映画史など、爆発とモンスターとおっぱいに彩られたコーマン映画の歴史を網羅。正反対とも思える道を歩みながら、娯楽映画を変えた二人の巨匠に、SF、活劇、怪奇など共通する要素が見えてくるのが興味深い。
スピルバーグとコーマンを同じようにリスペクトする姿勢が、実に秘宝的といえる一冊。そのほか、冒頭の正義! 破壊! 射殺! 団長! の文字がストレートすぎる、刑事ドラマ「西部警察」特集や、成海璃子はじめとする新連載陣、新作『ゾンビアス』を語り尽くす井口昇監督やクロエ・グレース・モレッツのインタビューなども注目だ。(編集部・入倉功一)
映画専門雑誌「映画秘宝」4月号(洋泉社刊)は発売中(税込み:1,050円)