賛否両論のドキュメンタリー『311』初日を迎える 森達也監督「自分たちのみっともなさを全部出そうとした」
東日本大震災の爪痕を記録したドキュメンタリー映画『311』が3日に初日を迎え、共同監督の1人である森達也監督が上映後に登壇し観客からの質問に熱心に答えた。
本作は、東日本大震災発生から2週間後、森達也、綿井健陽、松林要樹、安岡卓治の4人が、被災地へ入って記録したドキュメンタリー。被災地の状況に加えて、凄惨(せいさん)な被害の前に戸惑う自らの姿、また、遺族を目の前にカメラをまわし続ける彼らへ厳しい批判が向けられる場面も捉えられ、昨年山形国際ドキュメンタリー映画祭2011で上映された際には、その内容をめぐって物議を醸した。
森監督は「(この映画の)キーワードは後ろめたさ。311以降、日本中が後ろめたい思いをしていた。東北の方たちだけがなぜあんな目に遭わなければいけないのかという不条理さ。また、こんな地震の多い国でなぜこれだけの原発が必要だったのか、おかしいと思っても口にしなかった、そういう自分に対しての後ろめたさ。その感覚が現地に行ったとき、まさしくメディアの持つ後ろめたさに重複したわけです。こういった感覚をしっかり持つことは大事だと思う。自分たちのみっともなさを全部出そうとしました」と作品に込めた思いを語った。
また、森監督に女性観客から「人が目を背けたくなるような題材をあえて選ぶ印象があるが、その原動力はどこから来ているのか?」という質問が飛んだ。すると森監督は「テレビが同じ方向しか見ないという思いがあって、あえて(視点を)ずらしているのかもしれない。そもそも自分は子ども時代からずれていた。そんな経験則がないまぜになって作風らしきものになっているかもしれない」と自身の作り手としての原点について言及する場面も。その後も和やかにQ&Aは進み、質問に対してひとつひとつ熱心に解答していた森監督に終了時は温かい拍手が沸き起こっていた。(古河優)
映画『311』はユーロスペースほか、全国順次公開中